【海外起業】つつあるインドの食文化!本物志向のベーカリーを経営するご夫婦の挑戦


前回のインタビューより、インドで働く現地採用の方々に限らず、インドでスタートアップを立ち上げる経営者にも焦点を当てさせていただきました。今回は、今までのテイストを少し変え、インドでベーカリースイーツカフェを経営するご夫婦にフォーカスを当てさせていただきました。いつも優しい笑顔で包み込んでくれ、順風満帆に映るお二人ですが、今に至るまでは度重なる苦労があったようです。今回は、二人の今に至るまでの歩みを余すところなく、お伝えさせていただきます!


四年生大学卒業後、製菓の専門学校へ!?飲食の魅力に取りつかれた宮下さんの学生時代とは。

四年生大学をご卒業された後、なぜ飲食業界を選択されたんですか?

宮下さん:大学に行きながら、飲食のアルバイトを色々としていました。最初は、飲食の仕事は誰でも出来ると舐めていたんです。どの仕事もそつなくこなせていたので、当時はかなり思い上がっていたのかもしれません。そのうち、レベルの高い環境で働いてみたいという思いがあり、ホテルのレストランで働き始めたんです。ワイン、料理の知識もない未経験者で、最初はボロボロにくじかれましたね。最初はお客様の前で何もできなかったのですが、徐々に知識を蓄えて、お客様にワインやお料理の知識を提供して、お客様が喜んで下さることに飲食のやりがい、面白さを知りました。働いているスタッフと売上を競い合ったりというのも面白かったです!そこで、飲食業界にハマったんです。

作る側に興味を持ち始めたのはいつ頃だったのですか?

宮下さん:大学在学中に働いていたホテルのレストランはオープンキッチンで、シェフ、パティシエの方々が皿盛りするのを見ていたんです。そのとき、パティシエの方から色々学ばせていただいて、自分でやってみたい!と思い始め大学を卒業して、製菓の専門学校に行くことを決意しました。学校ではヨーロッパの伝統的な菓子や調理理論などを中心に勉強していました。チームを組んで時間内に作品を作り上げたり、放課後に仲間と技術を高め合ったりと充実した日々でした。外部講師として菓子屋オーナーの方々のお話もたくさん聞くことができ、菓子屋を経営するにあたってマネジメントが重要だなと強く感じました。大学でもマーケティングを専攻していたこともあって専門学校卒業後は菓子に特化したカフェやレストランの店長職に就きました。

 

語学留学から一転、専門分野で本場フランスへ!真央さん(奥様)の学生~社会人時代とは。

真央さんはどのような大学時代、社会人生活を送られてきたのですか?

真央さん:大学時代はフランス語を専攻していたのもあり、1年間休学して、フランスに語学留学していたんです。実は大学卒業した後、不動産会社に入りました(笑)専攻とは違うのですが、店舗デザイン、インテリアに興味があって、総合不動産でそういう分野も学べるかなと思い入社したんですけど、全然思い描いていたイメージの仕事とは違い、自分がやりたいと望む仕事とはかけ離れている業務も数多くありました。
その後は、インテリアやディスプレイを学ぶ事と、カフェスタッフという職業への憧れもあり、フランスの田舎がコンセプトの自由が丘にあるカフェで働き始めたんです。“フランス”とどこか繋がっていたいという思いもあって。

宮下さん:自分はその店の店長をしていました。彼女が来たとき、面接で落ちると思ってたんですけどね(笑)

真央さん:面接、、受かりました(笑)そこで主にケーキや焼き菓子ギフト、雑貨の販売をしていました。そのお店で2年くらい働いていたのですが、ケーキの厨房との距離が遠く、接客する上で疑問を感じていました。レストランのサービスもそうですけど作り手と顔を合わせて、その考えや思いもお客様に伝えることが大切だと思っていましたから。

そういう思いから別のパン製造のアルバイトを掛け持ちすることにしたんです。パン屋ではケーキも作っていました。朝から夕方まではパン屋で製造、夜はケーキ屋で販売するという生活を送っていて、その中で接客も好きだけど、ものづくりをもっと極めようと製造の仕事にシフトしていきました。

その後、どのようにフランス行きを決められたのですか?

真央さん:社会人になってからまた行きたいというのはずっと思っていました。本格的に再渡仏を考え始めたのはアルバイトを掛け持ちし始めた頃です。そろそろ資金も貯まってきたところ、留学時代に知り合っていた日本人のパティシエさんと5年ぶりに再会。現在の状況を説明したら、シェフを紹介してくれることになったんです。場所は当時の留学先と同じアルザス地方で、フランスの中でも伝統菓子が豊富でその分野で学ぶには最適な環境でした。その出会いと場所には物凄く縁があると感じています。それからワーキングホリデービザでフランスに渡り、ケーキ屋で半年働いてから、アルザスの田舎のオーガニック農家で住み込みで働き、野菜や果物、チーズ作りなどを学びました。フランスから帰国後、彼からインドに行く!と聞いて、かなり動揺しました。

 

「自分も一度海外で挑戦したい!」彼女に刺激を受けて一念発起!宮下さんの海外への挑戦!


海外で働くのはいつごろから意識をされていたのですか?

宮下さん:大学時代から、海外でチャレンジしたいという思いがありましたし、製菓学校時代の留学プログラムのチャンスを逃していたんです。妻と付き合っていた時に、再度フランスに行ってワーキングホリデーで働きたい!という話を彼女から聞いていて、それを実現していく姿を見て、徐々に自分も海外で挑戦したいと。

海外に出ることになったキッカケは何だったんですか?

宮下さん:すぐに海外就職できる状態にするために、仕事を辞めて、1年弱飲食店でアルバイトしながら、知り合いの繋がりや人材紹介会社を通して海外就職活動を進めていました。

そんな中アルバイト先の日本人オーナーと話す機会があり海外就職活動中だという話をしたら、後日「インドはどうかな?」と聞かれ「大丈夫です。」と即答したんです。彼はインド人経営者と古くからの繋がりがあり、そのインド人経営者がデリーに和食レストラン『En』をオープンするので、その店のデザート担当として働いて欲しいという話でした。その時点でオープンまで1か月を切っており、すぐにVISAを取得し2013年9月に渡航、インド就職の実現となりました。

インドと聞いて、抵抗感はなかったのですか?

宮下さん:海外就職活動を始めて1年経過して、早く決めたいというストレスもありましたし、英語圏であれば国のこだわりも特になかったんです。いいタイミングでご縁をいただき、実際にインド人経営者と日本で直接会って話をし、自分が成長できる仕事だと感じたのですぐに決めましたね。

インドに来た直後は、どういうお仕事を担当していたのですか?

宮下さん:和食レストラン『En』のデザート部門を担当していました。和の皿盛りデザートは初めての経験で、ひたすら試作しては、チェックしての繰り返しの日々でしたね。そこで、2年くらい働くことになりました。

レストランで和テイストのスイーツを提供していく上で、日本人のお客様に喜ばれることは有難いことに多かったのですが、インド人のお客様にはなかなか難しいものがありました。実際ローカルのパン屋、ケーキ屋、カフェを回っては調査しましたが、もっと美味しいものが作れるはず、もっと身近に手の届く商品を提供する場を作りたいとインド人オーナーに相談しました。その場を作って頂いたことにとても感謝しています。

限られた食材の中でどこまで美味しさを追求できるか!宮下夫婦のあくなき挑戦!


出店にあたり場所決め等、色々大変なこともあったのではないですか?

宮下さん:お店探しは、新興開発エリアのグルガオンでと考えていました。理由は多くの日本人が住んでおり、メルセデスベンツ(ドイツ)やサムソン(韓国)をはじめ多くの外資系企業が集まっているので、そこにビジネスチャンスを感じたからです。ベーカリーカフェは客単価の低い商売なので、ある程度客数が見込めるモール内というのも一つの条件でした。当初の予定よりかなり遅れての着工でしたので本当にオープンできるのだろうかと、日々ヒヤヒヤしていました(笑)

真央さん:私達が結婚したのが2014年の4月、そしてインドに来たのが同年の11月でした。その前から出店する話は聞いていて、何か役立てる部分があればと思っていました。ちょっとお手伝いするくらい(笑)でも、そうはいかなくなって。

宮下さん:インドは夏も長いですし、ケーキだけでは難しいという考えもあったので、ベーカリーをメインにやろうと話が進み、パン製造経験を持っている妻の助けが必要でした。

インドでベーカリーカフェを経営していく上で、大変だったことは何でしょう?

宮下さん:一番は食材の安定的な仕入れですかね。発注と違う物が届いたり、欠品状態が続いたり、いざ物が届いても状態が悪く返品せざるを得ないことは日常茶飯事です。

インドだからこそ、やりがいを感じられる点はありますか?

宮下さん:限られた素材の中で、いかに美味しいものをつくれるかというのはありますね。日本では、上質なものを簡単に仕入れることが出来るのですが、ここでは質の良いものも良い状態で手に入れられる環境がまだ整っていません。であれば、現地の食材をうまく使って最大限に美味しいものを作るということがやりがいに繋がっています。インポート食材は極力使わずに、出来る限りインドにあるものを活かして、レシピを工夫しています。例えばインドのバニラは安く、上質なものもあったりする。こういったものも、現地で定期的に行われる食の展示会や食材メーカーに直接足を運んで、見つける努力をしています。

インド人に一流のスイーツを。本物を知っている二人だからこそできること!


インドで働く上で、大切にしている考え方はありますか?

宮下さん:インドに来るまでは日本が全てだと思っていました。でも、今は日本が必ずしも正解ではないと感じています。
どれだけ良質なスイーツを提供してもインド人のお客様に受け入れられないというジレンマがあったりしたので、インド人が普段食べ慣れている食材を切り口として日本人に認められるクオリティを保ちつつ、なおかつインド人も口にしてくれる物を作ろうと歩み寄る努力をしています。どちらかに偏ってもいけませんし、そこは譲らずに追い求めるようにしています。その努力が少しずつ受け入れられているのか、最近はインド人のお客様がお店に足を運んでくれるようになっています。

真央さん:まずはインド人のことを知ること。食に対しては保守的なので興味を持ってもらうという点を大事にしています。また、私たち日本人とは味覚が違うので、インド人スタッフやお客様の意見も参考にしながら商品開発を進めています。インド人には自分たちの現地の素材が、アレンジ次第でこんなに美味しいものになるという発見をして欲しい。もちろん私たちもインド人スタッフやお客様との会話を通じてヒントを得ることもたくさんありますよ。インド人の食文化を知り、受け入れた上でトータル的にマネジメントしないといけないと思っています。

宮下さん:若いインド人スタッフへの教育にも力を注いでいます。まずは、スタッフがものづくりやサービスの楽しさを自分自身で感じられるように促していくこと。そして人と食を通してリーダーシップや責任感など、彼らの中に眠っている能力を引き出すことが大切だと感じています。その為には日々のポジティブなコミュニケーションや仕事を大胆に任せてみる等の取り組みが必要になってきます。また、私たち外国人シェフと関わることで食の世界の奥深さや幅広い働き方を知ってもらいたい。自ら目標を持って力を付け、世界で活躍できる人間になって欲しいと考えています。

お休みはどのように過ごされているのですか?

宮下さん、真央さん:普段から気になった場所に行ったり大抵はカフェ巡りですね。デリーのサケットにあるBlue Tokaiのコーヒースタンドは雰囲気もいいですし、味もかなりオススメです。実際に『DE LOFT』のコーヒーもこちらでローストした豆を使用しています。後は、ディスプレイアイテムを探しにインド工芸品を集めたデザインフェアに行ったりしていますね。

これからお二人はどのような将来像を描かれていらっしゃいますか?

真央さん:日本人であるからこそ日本の素材を使って、美味しいものをつくるというのは、意味のあることだと思っています。やはり母国の産業にも目を向けなければなりません。それはヨーロッパやインドに来てずっと感じていることです。日本は都心部に集中しすぎている印象がありますが、地産地消に興味があるので、地方を活性化するような取り組みをしていきたいなと将来的には考えています。

宮下さん:身近な目標としてはテーブルウェアや工芸品などインド国内の食に関連した物を発掘し、それをうまく取り入れた食と生活スタイルの提案をしたいと考えています。

最後に、インド就職を目指す方々にメッセージをください!

宮下さん、真央さん:インドに来るのを迷っているのであれば、まずは来るべきですね!日本で流れているインドの情報に惑わされずに、実際にインドに来て肌で感じて欲しいです。日本人同士の繋がりも強く、業種を超えた交流も頻繁に行われているので、共に助け合いながらビジネスや生活が出来る環境にあります。一緒に頑張りましょう!


パン屋:De Loft (ドゥロフト)in グローバルホイヤー:詳細
営業時間11:00-20:00
場所GLOBAL FOYER GF,Sector-43,DLF Golf Course Road,Gurgaon
席数16席
定休日日曜日
予算500
問い合わせ+91 124 4223752
編集後記:冷静で落ち着いた口調であるが、インド人に本物を味わってほしいという情熱を燃やす宮下さんと、それを支える天真爛漫の明るい笑顔で、お店のムードを支える真央さん。見ている誰もが微笑ましくなるほど、絵に描いたようなご夫婦でした。日本のスイーツをそのまま持ち込むのではなく、あくまでインド人の舌にも受け入れられる事を前提に、インドで仕入れた素材で、最大限の努力を積み重ねる。その成果が実り、店内には、お二人が「本物志向で創り上げた作品の数々」を堪能するインド人の姿が多く見受けられました。インド人スタッフと協力しながら、アットホームな雰囲気が漂う店内には、丁寧に陳列されたパンとスイーツの数々が。是非、インドにお越しの際は、立ち寄っていただきたいです。なんだかあったかい気持ちになれます。

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