生徒数は22万人!世界の注目が集まるインドトップ大学のカレッジ制度とは

インドといえば、近年ビジネス界を盛り立てている人材を最近よく耳にします。Softbankの副社長ニケシュ・アローラ氏やGoogleのCEO サンダー・ピチャイ氏、Microsoftのサチャ・ナデラ氏などグローバル企業の重要ポストについているインド人を見ることは日増に多くなっています。こういった人材を多く輩出するインドという国の教育はどのようになっているのでしょうか。本記事では、インドのトップ校の一つであり、ユニークな教育制度を採用しているデリー大学をクローズアップしてみたいと思います。

優秀な学生が集まるインドのトップ校

デリー大学は、英国の大学と似た制度を採用しています。名門校国立大学デリー大学では、英国の名門校オックスフォード大学、ケンブリッジ大学等を彷彿させる「カレッジ制度」を採用しています。デリー大学はIITに次ぐ、国内外問わず有力者を多数輩出しているインドのトップ校の一つです。デリー大学内のトップカレッジには、インド国内外の多国籍企業または大手企業がこぞって人材を求めてきます。トップカレッジを輩出する教育制度とはどのようなものなのでしょうか。

 

同じ大学、同じ学部。なのに違うカレッジ?

(Ramjas College)

デリー大学では、同じ経済学部なのに、通っている校舎が違うということがあります。というのは、経済学部がいたる校舎で教えられているのです。デリー大学では学生は基本的にカレッジというものに所属するのですが、異なるカレッジが同じ経済学の学位を提供していることがあるのです。

そもそも「カレッジ」とはどのようなものなのでしょうか?日本やアメリカでは、カレッジは基本的には短期大学や職業訓練校等を表す言葉です。しかし、デリー大学では、カレッジは少し違った意味を持つのです。では、カレッジとはいったいどのようなものなのでしょう?

インドでの大学教育での、ユニバーシティとカレッジの違いはおおまかに次のようになっています。


ユニバーシティは、大学院教育や研究をする機関。
カレッジは、学部教育をする機関。

カレッジのイメージとしては、研究機関付属の小規模な大学とでも捉えておくといいかもしれません。たくさんのカレッジが、デリー「ユニバーシティ」と提携して、デリー大学郡を形成していると考えると分かりやすいかもしれません。実際に、大学生として学ぶ際にはカレッジを中心として学習を進めることになるのです。専門性が高い内容になるにつれて、図書館や学部(大学院等の研究機関)での学習が増えてきます。

デリー大学の入学試験を受ける場合には、統一の試験があるわけではなく、個々のカレッジの試験を受けることになります。デリー大学が一括で試験を執り行っているわけではないのです。

名門カレッジの人気学部では、入学試験の足切がなんと満点になることがあります。India Todayによると、Lady Shri Ram, Atma Ram Sanatan Dharma and College of Vocational Studies の商学部では全得点の99%を取らないと、足切にかかってしまいます。たとえ95点という高得点をとっても入学することはできません。デリー大学でただ商学を勉強したいのであれば、この99%の足切試験を越えなければならないわけではありません。70%ぐらいの得点率で入学できるカレッジもあります。(もちろん人気の学部なので、難しいことには変わりありません。)この厳し過ぎる競争が、優秀な生徒を引き上げる一因なのかもしれません。

(School of Economicsの食堂にて)

 

世界有数の規模を誇るデリー大学

デリー大学は16学部、78のカレッジからなる国立総合大学です。生徒数は、22万人と世界有数の規模を誇ります。卒業生には、アウンサンスーチー氏やマスターカードCEOのアジャイパル・シン・バンガ氏、元ドイツ銀行共同経営者のアンシュ―・ジェイン氏などがいます。ビジネス界での成功している卒業生が多く書ききれないほどです。

デリーの北部と南部二つに大きなキャンパスがあり、その他にもカレッジもデリー全体に散らばっています。デリー準州全体がキャンパスなのです。北キャンパスでは、動物学、医学、教育学や一般的なアーツのカレッジが集まっています。南は、工学やIT等がメインのキャンパスです。大学全体で8つの図書館があり、期末試験や司法試験等に備えて勉強する学生で連日満席です。中央図書館の中には、司法試験や学科の試験に備えて勉強する学生達でいっぱいでした。

(Central Library)

デリー大学は、インドのトップ校の1つです。Shriram College of Commerce、Hindu College、St. Stephen Collegeなどの名門カレッジには、世界有数の企業が優秀な生徒を求めて訪れます。Shriram College of Commerceでは、DeloitteやPwCなどのコンサルタント会社や、GoogleやInfosysなどの世界的なIT会社、国内最大手の自動車メーカーMaruti Suzuki(スズキ)など国内外の大会社がキャンパスリクルーティングに訪れるのです。
各カレッジも就職課を持っていますが、デリー大学全体としての就職課もあります。上にあげたようなトップカレッジ以外への注目もあがっているそうで、近年日系企業をはじめとした外資系企業からの問い合わせや利用実績が増えているいるそうです。日本を代表する製紙企業から日系自動車部品メーカーまで利用の登録がありました。また、インド国内の大手IT会社や英国の大手通信会社などますます注目度が上がっているそうです。


(試験期間中にも関わらず、インタビューを受けてくれた学生達)

 

英国のカレッジの制度との違い


(ケンブリッジ大学)

英国統治下に英国のユニークな教育システムを取り入れたデリー大学。英国のカレッジ制度との違いはどこにあるのでしょうか。

英国で「カレッジ制」を採用している大学は3校のみです。オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、ダラム大学の3校です。オックスフォード大学は、39のカレッジをもつ国立大学です。ケンブリッジ大学とともにオックスブリッジと呼ばれ、世界でもトップクラスの教育・研究機関です。英国でもこの2校と名門校の一つダラム大学のみが「カレッジ制度」を採用しています。今回は、オックスフォード大学とデリー大学を比較していきます。

1、英国のカレッジは、カレッジ毎の特色が強い

オックスフォード大学では、全ての教授と生徒は必ず1つのカレッジに所属しています。カレッジは学生の学習と生活指導に責任を負っています。カレッジ内の寮に住む学生も多いことから、各カレッジ毎に独自の共同体意識があるといいます。また、1つのカレッジの学生数は400人と少ないことから、Tutorialとよばれる個人指導や少人数教育など手厚い教育サポートがあるのです。英国のカレッジの特色として自治権が強く、独自性が強いという点が挙げられるのではないでしょうか。

2、比較してデリー大学は人数が多い

デリー大学のカレッジは、各カレッジの学生数が2,000人ほどいます。オックスフォード大学の学生:教員の比は1:10ほどです。しかし、デリー大学は1:20ほどであり少人数教育やTutorialを密に行うのは難しくなっています。
密な教育やフォローアップという点ではデリー大学は1歩劣っていますが、長くインドの発展を支える人材を輩出してきました。その背景には、ひとえに巨大な人口を背景とする競争があると思います。実際に、学生に話を聞いたりすると、学生の学習意欲が高いことに気づかされます。少ない席の役所の仕事に就くために、図書館にこもって勉強することもあるそうで、デリー大学の図書館はほぼ満席でした。国内での競争の激しさと勉強する熱意、そうしたハングリーさのようなものが優秀な人材を育てる要因かもしれません。

 

まとめ

カレッジは英国発祥の教育制度。デリー大学教育の根幹をなしていて、学生たちは専門性の高い学習のための基礎をカレッジで勉強します。英国のカレッジ制度は、密な教育制度を提供していて独特の共同体意識を育んでいます。一方、デリー大学ではそうした密な教育を提供できてはいませんが、学内・国内競争を背景とするハングリーさが優秀な人材を育てているのかもしれません。

 

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