インドの成長&改革を担うモディ政権とは?!


ついに誕生!期待のインド・モディ政権!


「これはインドとインド人の勝利だ」。 2014年5月16日のインド総選挙(下院選)で圧勝を飾った、最大野党インド人民党(以下、BJP)の首相候補、ナレンドラ・モディ氏(当時63歳)は地元のインド西部のグジャラート州で勝利の第一声を上げました[1]。
同州の首相として経済改革で実績を上げ、若者や都市住民を中心にカリスマ的人気を集めたモディ氏。BJPとその友党に10年ぶりの政権奪還をもたらし、同年5月26日に正式にインド第18代首相に就任しました。これに対し、初代首相ネールやその娘インディラ・ガンディーなど多くの首相を輩出し、独立インド67年の歴史でなんと計50年以上にわたって政権を担ってきた老舗政党・国民会議派(以下、INC)は、改選時のほぼ5分の1の44議席(定数543議席)に転落するという歴史的惨敗を喫しました。こうしてモディ政権はインド国民の大きな期待を背負うことになりました。

一体、モディ氏ってどんな人?!

まず、モディ氏の生い立ちを簡単に説明します。モディ氏は、1950年9月17日、北グジャラート(現在のグジャラート州)のワタナガルで生まれました。中流家庭の出身で、6人兄弟姉妹の3番目でした。グジャラート大学を政治学修士号を習得して卒業しましたが、学生時代は自分でチャイ屋をやって生計を立てたというなんとも苦労人です。

次に、モディ氏の人間性の特徴を見ていきましょう。 はじめに、彼は話し上手[2]です。ほとんどの演説を即興で行い、原稿は使いません。そして、壇上に上がると会場は静まりかえり、インドに訪れた人はご存知かと思いますが、いつでも騒がしいことで有名なあのインド人が口を閉じるのです。それほどまでに彼の雰囲気や話し方は人々を引き込むことがうまいと考えられます。

また、彼は規律の正しい人物です。清潔なファッションスタイルにも表れています。日課としては毎日ヨガを欠かさず、健康管理を怠りません。彼は時間の浪費を嫌い、役人に対して期限通りの結果報告を求めます。私生活でも仕事でも高い規律を求めているのです。さらに、彼は忍耐強いハードワーカーです。というのも、なんと彼は選挙期間中に約1800回もの演説を行いました。また、1日の始まりは朝5時で、終わるのは夜の12時です。自分に厳しく、周囲を引っ張っていく、まさにリーダーにふさわしい素質の持ち主なのでしょう。

モディ政権が大きな期待を背負っている訳とは?!

モディ氏が以前の首相たちと違い、どうして総選挙で圧勝出来たのか。 インドは長い間、総勢4000〜5000人とみられる少数のエリート一族によって支配されてきました[3]。エリート層が公的分野の全てを支配しています。そういった意味で、モディ氏は世襲制のエリートたちを屈服させたと言えます。これまで長年続いたコンセンサス政治・多党政治や、特定の宗教やカースト、民族にのみアピールして勢力拡大を図るインド政治。これを変えることが出来るのは、きっとモディ氏だと国民は信じていたのでしょう。

さらに、 クジャラート州首相として高成長を達成した背景も関係しています。前シン政権が汚職や腐敗に有効な策を講じることが出来ず、経済低迷も打開できませんでした。しかし、モディ氏はクジャラート州にてインフラ整備や外資受け入れなどにより経済成長を実現しました。こうした実績もあって、彼は国民の信頼を勝ち取ることができたのかもしれません。

モディ政権の政策とその後のインドの変化は?

2016年5月末でモディ政権の誕生から2年が経ちました。グジャラート州で成功を収めた改革モデルは、多様性と格差にあふれた全インドに応用できるのかという難しさがあります。その中でモディ政権はどのような政策を採り、インドはどう変化したのでしょうか。また、インド国民や内外の反応はどうでしょうか?中心となっている政策から具体的に見ていきます。

モディノミクスの内容とは?!

①.「メイク・イン・インディア(インドでモノ作りを)」


「Make In India」とはインドを「世界の製造・輸出拠点」とする構想のことです[4]。外資誘致を積極的に推進し、製造業の飛躍的発展を目指しています。これまでインドの発展は、主にサービス業が担ってきました。なぜなら、インフラ不足、各種投資規制や煩雑な行政手続きなどを背景に、製造業は伸び悩みが続いていたからです。そこで政府は、まず規制緩和によって企業活動を活発にし、インフラ整備に積極的に取り組んでいます。そして、製造業の発展により、インド経済が再び高成長に回帰することが期待されています。実際に、「メイク・イン・インディア」の取り組みが発表されてから2015年12月に至るまでの間、インドの電子機器製造産業には実に総額1.2兆ルピー(約2.3兆円)が投資されています。外国企業からインドの製造業への投資を促進させるため、ビジネス環境の改善に力を入れてきました。

②.「スワッチ・バーラト(クリーン・インディア)」


「スワッチ・バーラト」とは、2019年までに1.96兆ルピー(約3兆5000億円)を投資し、12000万家庭に専用トイレを設置することを目指したものです[5]。小中学校のトイレや公衆トイレなどを整備するとともに、衛生に関する啓蒙活動も展開するとしています。「ヒンドゥー寺院よりトイレを」「すべての家庭にトイレを」などの公約からも分かるように、インドの衛生面の改善です。政府がこれほどまでにトイレにこだわる背景にあるのが、インドの公衆衛生にとって著しい脅威となっている「屋外排泄」です。2015年11月時点で、トイレのない家に住んでいる人は、人口の6割にあたるおよそ7億7400万人が該当しました[7] 。インドでは、大都市のど真ん中にあるスラム周辺や川の土手、鉄道の線路敷などでも毎朝、後始末用の水を入れたペットボトルを片手に老若男女がぞろぞろと並んで一斉にしゃがみ込む光景が見られます。インドで様々な場所に行ったり、インド在住した経験がある方は、見たことがある風景ではないでしょうか?

③.「デジタル・インディア」


「デジタル・インディア」とは、様々なハイテクにより国民が電子行政サービスを利用し最新のICTを享受できるようにする取り組みのことです。主な狙いは、様々な行政サービス窓口の改善です。特にJAM(Jan Dhan-Aadhaar-Mobile)と呼ばれる「銀行口座」(Jan Dhan Yojana)、「国民ID制度」(Aadhaar)「携帯電話」(Mobile)の一体的活用による生活保障支給インフラには力を入れて取り組んでいます[6] 。
さらに、インド電気通信管理局(TRAI)によると、2016年1月現在でインドの携帯電話加入者総数が遂に10億人を突破したと発表しました。そのうち、インドのスマホ人口は1億2,500万人と、中国、アメリカに次いで世界で3番目につけており、これから内需の伸びしろは、非常に大きいと考えられています。

はたしてモディミクスの政策の効果は?そしてインド国民の反応は?

モディ氏は昨今、「約束ばかりで全然実行に移さない。」と非難されることが多いのが現状です。改革の目玉であり、2016年4月までの実施を公約していた税制の簡素化は国会で抵抗に遭い、産業界が期待する税制改革は上手く進んでいないようです。

しかし、モディ氏の監督の下、インド政府は、道路建設を加速し、老朽化する鉄道に投資し、野心的な太陽光発電計画を開始し、銀行口座を持たない2億人以上の国民に銀行口座を開設し、保険から防衛産業に至るまで様々な分野で外資の出資制限を引き上げてきました。[7] 。
この中でも、一番効果が出ているものとしては、現在インドに外国資本が次々と投入されていることです。以下、その例を挙げています[8] 。
  • アメリカのゼネラル・モータース(GM)が生産拠点の集約などと合わせて10億ドルの投資計画を表明。
  • ドイツの電機大手シーメンスCEOがモディ氏らと会談し、インドに10億ユーロ(当時1ユーロ=約137円)の投資を表明し、[9]スマート・シティ開発計画におけるソリューションにおける協力を約束。
  • 台湾のEMS(電子機器の製造受託サービス)世界最大手フォックスコンは西部マハラシュトラ州に半導体工場を建設するなど、インドに今後5年で50億ドルを投資する計画を発表。
  • スウェーデンの家具大手イケアは、すでにインド国内に25店舗を展開する投資計画を決めており、従業員の採用を開始。
  • 中国家電大手のハイアールやスウェーデンの通信機器大手エリクソンをはじめ、中国のスマホメーカーなども、相次ぎインドの生産拠点への新規・追加投資を発表。
現状では、これらによる直接的な経済指標の変化はまだ見られていませんが、雇用創出など、蒙る恩恵は大きいと思われます。モディノミクスに加え、インドには近い将来に世界一になるでろう人口という多きな魅力が存在します。人口が多いということは、市場があるということです。インドは中国と比べて若年層が多く、ピラミッド型の人口構成です。労働者人口は今後30年ほどは確保できる構成なのです。以下のグラフをご覧になると、人口の多くを29歳以下の若い層が占めていると分かります。


(参照:Central Intelligence Agency the world factbook 2015 india)

これからインドはすぐに経済が回復する、こういう見方もできるでしょう。ですが、モディノミクスが急速に進み、海外マネーも集まるという理想が、現実にはうまくいっていないという見方が強まっています。モディ政権は少なくとも国民に対し、中長期的にどんなインドを作っていくかあまりに高い期待があったので、現在の状況に失望をする人もいます。もちろん、改革で目に見える結果を出さねばならない状況ではあります。しかし、上記の政策は数年で結果が出るような政策ではないことは十分に予測できる範囲ではないでしょうか?インドは現実に7億人を超える農民、さらに2億人を超える貧困層を抱えています。加えて、インドという大国で、諸外国との外交関係も同時に良好に築いていく必要性があることも、モディ政権を評価する際に考慮する観点でしょう。

今後、日本とインドの関係は一体どうなる?


最後に、日印関係を見ていきましょう。日印関係は、安倍首相とモディ首相の下で急接近しています。2015年12月には安倍総理が訪印しました。この際、モディ首相は日本の新幹線の安全性,正確性という点で世界の高速鉄道の中でも群を抜いている理由から、中国ではなく、日本の新幹線システム導入を決断しました。これにより日本のインド経済全体に対する大きな影響、さらにメイク・イン・インディアへの貢献が期待できます [10]。

しかし、日本とインドの経済的つながりはまだまだ著しく弱いと考えれます。なぜならインドは世界7位の経済国であるものの、日本の輸出入、および対外直接投資の1%程度しか占めていません[11] 。今後、中長期的に日本とインドのつながりが経済、そして政治面でも強固になっていくことが考えられます。さらに、JETROの「インド日系企業リスト」によると、2016年2月現在、全インドにおける日系企業の拠点数合計は、4,417拠点です。2014年の3,881拠点(修正値)と比較して、536拠点の増加(14%増)しました[12] 。ですが、海外に進出している日系企業の総数(拠点数)は,国別で比較すると、中国に3万2,667拠点(約48%),アメリカに7,816拠点(約11%)であることから、インドの少なさが伺えます。

多くの日系企業にとってインド進出はインド独特の社会文化のため、簡単なものではありません。しかし、インドのマーケットは大きく、将来性もあるので今後も進出する日系企業数も多くなる予想されます。ですから、これからも両国の関係から目が離せません。

まとめ

いかがだったでしょうか?インドの現モディ政権について理解いただけたでしょうか?経済成長を様々な政策を用いて実現を試み、国民の生活を良くしようと奮闘しています。近い将来、モディ政権の政策が世界に大きな影響を与えるかもしれません。間違いなく、これから私たち日本人にとってもインドは関係を築かざるを得ない存在です。そんな今後ますます世界から注目が集まるインド。この多様性、そして可能性に満ち溢れたインドでの就業経験は、あなたにとってこれから大きな財産になるはずです。ぜひこのインドでの就職を考えてみるのはどうでしょうか?

(参考資料)
[1] 日本経済研究センター「モディ首相」が挑むインド政治の難問」2014年5月28日
[2]東洋経済「モディを理解すれば、インドの今が分かる」2014年7月10日
[3]東洋経済「モディがインドにもたらした大きな『進歩』」2016年1月16日
[4]HSBC Global Asset Management
[5]新潮社フォーサイト「クリーン・インディアはインドを救えるか」2015年1月10日
[6]ビジネス+IT「デジタル・インディア」とは何か?インドが目指すIT国家像に迫る2016年1月12
[7]日本経済新聞 「経済改革へともがくインド首相」2016年5月17日
[8]4に同じ。
[9]Enterprise Inovation「インド100のスマートシティ計画が形になる」 2015年10月21日
[10]インド基礎データ 外務省
[11]JETRO 直接投資統計 国・地域別(長期データ)
[12]インド進出日系企業リスト JETRO 2016年2月