インドとASEAN インフラ比較シリーズⅤ~高速鉄道編~

「今度のインド旅行は、新幹線で駅弁食べながら、車窓からデリーの景色を眺めるか~~」

そんな夢のような話が、近い将来インドで実現するんです!日本で初めて運行して以来、50年以上もの間世界各地の人々を運んできた高速鉄道。それがついに、インドを走ります!!第一弾の完成予定は2023年で、実現したら日本・中国・台湾に次いでアジアで4番目に高速鉄道が走ることになります。

インフラシリーズ第5弾となる今回は、現在アジア各国で計画中の「高速鉄道」を取り上げます!以前シリーズで取り上げた「鉄道編」の続編です。都市間を早く移動できるだけでなく、経済効果や雇用創出など、様々な利益が期待できる高速鉄道事業。インドに限らずアジア各国でプランが進んでいるグローバルなインフラ事業です。

インドが鉄道大国で、ASEAN諸国に負けていないことは既にお伝えしましたが、高速鉄道においてもインドはひと際目立ってます!インドに高速鉄道ができて、どのように交通アクセスが変化し、どんな未来が待っているのか。今から一緒にインドの高速鉄道の可能性・未来を見ていきましょう!

もちろん今回もインドとASEANの現状を合わせて紹介します。比較する国はタイとベトナムです!

インドの高速鉄道事業

<http://www.business-standard.com/article/pti-stories/bullet-train-will-need-100-trips-daily-to-be-financially-116041800132_1.htmlより参照>

しかし「高速鉄道」ってあまり耳慣れない言葉ですよね?「新幹線じゃないの?」と思った方がいるのではないでしょうか。そこでまずは、「高速鉄道」と「新幹線」の違いについて説明します。

UIC(国際鉄道連合)によると、200km/h程度以上の速度で走行できる列車を「高速鉄道」と呼びます。一方「新幹線」とは、そうした高速で運行できる列車のうちの1つであり、JRが保有するシステムです。SONYの「ウォークマン」やTOTOの「ウォシュレット」などと同様に、「新幹線」は高速鉄道システムを具体的に指す「固有名詞」だと思って下さい!

高速鉄道計画の全容

‹http://www.hindustantimes.com/india/debate-rages-on-high-speed-train-plans/story-ekgUrx1FNMiQtSLFEnWNBN.htmlより参照›

言葉の意味を確認したところで、さっそくインドの高速鉄道計画に迫ります!重要なキーワードは「ダイヤの四角形」です。現在のモディ政権によって提唱された、デリー・ムンバイ・チェンナイ・コルカタの四大都市を結ぶ路線網を指す壮大なプランです。写真の通り、インド全体を覆うように路線を敷く予定です。領土面積世界7位のインドだからこそなせる、大胆な計画ですね!

この計画、政府は本気で実現しようとしています。長年のネックだった費用については、高速鉄道事業に約1兆1000億円もの公的資金を導入したのもそうですが、特に2014年の規制緩和による海外投資によって打開しました(日本政府は1兆円も支援してる!)。また、プロジェクト開発・運営のためだけに「インド高速鉄道公社(HSRC)」という組織まで作ったんです!こうした取組から、何としても実現させようという政府の思いが伝わってきます。


「ダイヤの四角形」実現に向けたファーストステップとして、現段階では上記の7路線が敷かれる予定です。それぞれ、どれほどの距離を走るんでしょうか。各路線に番号をふったので、参考にしながら見ていってください!

路線距離
①デリー〜アムリツァル(Amristar)480km
②デリー〜ジャイプール(Jaipur)280km
③デリー〜パトナ(Patna)991km
④コルカタ〜ハルディア(Haldia)140km
⑤ムンバイ〜アーメダバード(Ahmedabad)508km
⑥チェンナイ〜ハイデラバード(Hyderabad)780km
⑦チェンナイ〜バンガロール〜エルナクラム(Ernakulam)800km

総線路長線路密度(km/km²)
3979km0.0012

合計距離3979kmに及ぶ大規模な計画です!先にあげたデリー・ムンバイ・チェンナイ・コルカタという4都市を起点に路線が敷かれていることから、「ダイヤの四角形」を想定したプランであることが分かります。これまで世界第4位である6万5千kmもの線路を敷いてきたインドですが、ここからさらに鉄道ネットワークを広げようとしています。

国土にどれだけ高速鉄道が敷かれているかを示す「線路密度(km/km²)」は0.0012となっております。これについては後ほどタイ・ベトナムと比較しながら解説していきます!

 

これまで250~800km程度の都市間移動がインドの交通の課題でしたが、このようにインド全土に高速鉄道を敷くことで、スムーズな都市間移動がインドで実現されます!

 

ざっと計画を確認したうえで、今度は高速鉄道でインドの交通アクセスはどう改善されるのかを見ていきたいと思います。

インドで最初の路線となる「ムンバイ~アーメダバード間計画」を扱って検証しましょう!

ムンバイ~アーメダバード間計画

<http://checktrainpnrstatus.com/blog/railway-ministry-first-bullet-train-run-india-2023/より参照>

ここに敷かれる高速鉄道、実は日本の新幹線なんですよ!「のぞみ」や「ひかり」のような新幹線がインドを走ることを想像するだけでもワクワクしますね!総工費1兆800億ルピー(約1兆8600億円)のうち日本政府は8800億ルピー(約1兆5000億)という破格の円借款(政府・公的機関が長期的に開発資金を融資すること)を実施する見込みで、事業自体にはJR東日本などの参画が決定しています。日本政府がこれほどの額を投じる背景は何なのでしょうか。

冒頭でもお伝えした通り、この高速鉄道事業は世界的に注目されており、中国を筆頭に鉄道先進国がこぞって受注を狙っている状況です。ですので日本としては何としてもこのプロジェクトを成功させて信頼を獲得し、インドの他の路線・他国の受注に繋げたいからこそ、これだけの金額を投資するのでしょう。


日本が全面協力の下実施されるこのプロジェクトは、2023年開業を目指しています。人口1200万人を抱えるインド最大の商業都市ムンバイと、人口560万人の工業都市・アーメダバードが結ばれます。都市間の距離は508kmで、これは東京~新大阪間とほぼ同じ長さになります。この距離を最高速度320㎞/hで走る予定で、これは現在運行している日本の新幹線(320㎞/h)と同じ速さです!

しかし、実際に多くの人々が利用することは見込めるのでしょうか。


両都市間と東京~大阪間の沿線人口を比較した資料がこちらになります。注目すべきはムンバイ~アーメダバード間の沿線人口の多さ!表に挙げられた都市の合計だけでも約3400万人を誇り、東京~大阪間の約2000万人を優に超えています!これだけ多くの人々が密集する場所に線路を引けば、十分な乗降需要が見込めることが分かります。

ここまで計画の全容について見てきました。では、この区間に新幹線が敷かれることで、どれほど時間が短縮されるのでしょうか。既存の交通手段と比較してみましょう!

交通手段移動時間(ムンバイ~アーメダバード)
約8時間30分
鉄道約8時間20分
飛行機約1時間半
新幹線約2時間10分(特急)~2時間50分(各停)

車・鉄道と比べて6時間も短い結果となりました。雨や渋滞などの天候・交通状況によってはさらに差が開くと思います。現在、両都市を繋ぐ交通手段の85%は自家用車・バスが占めていることから、利便性を求めて多くの人々が新幹線へとシフトしていのではないでしょうか。

さすがに飛行機には敵いませんでした。やはり大都市間の移動となると飛行機に部がありそうです。

しかし、飛行機とは異なりムンバイ〜アメダバード間に点在する都市へのアクセスも可能なのが新幹線の強みです!例えば、ムンバイとアメダバードのちょうど真ん中に位置する「スーラト」を訪れたい時、各駅の新幹線に乗れば途中下車して難なくアクセスできます。各駅停車の新幹線に乗った場合でも3時間弱で着くので所要時間も全く問題ありません!

さらに、飛行機だと空港に到着してから、バスやタクシー等で都市中心部への移動が必要になってきます。その点、新幹線だと都心に直行できるので、よりスムーズなアクセスが可能です。

このように車やメトロより格段に速く移動でき、飛行機よりも大都市の近郊や都心に直接アクセスできる新幹線は非常に便利です!

1つ、気になる点は運賃です。料金は約5000円からを予定しているようですが、これは同区間を走るLCC飛行機とあまり変わらない料金です。しかし採算性を考えて値下げは予定していないようです。

価格で差をつけられないとなると、都市中心部に直行できたり小回りが効くなど、他の点でプロモーションしていく必要があり、どう飛行機との差別化を強めていくかは今後の課題と言えるでしょう。

以上、「ムンバイ~アーメダバード間計画」でした。課題もありますが、高速鉄道という新たな交通アクセスができることで、インド内での都市間移動がよりスムーズになることは間違いありません!

 

しかし、高速鉄道がもたらすメリットはそれだけではないんです。高速鉄道を敷くことで、その他どういった変化がなされ、私達にどんなメリットをもたらすのか、見ていきましょう!

高速鉄道がもたらすメリット

都市間のスムーズな移動以外に、高速鉄道がもたらす変化とは何なのでしょうか。以下、ポイントをまとめてみました!

①インドの鉄道サービス全体の質が向上し、より安心・快適にインドで列車が利用できる

②都市近郊へのアクセスが改善され、通勤圏と商圏が拡大していく

③新たなビジネスが創出される

 

インドを訪れる私達にとって最大のメリットは①鉄道サービス向上だと思います。これはインドで最初の高速鉄道が日本の「新幹線」になったことが重要なポイントだと筆者は感じています。

インド政府は、この高速鉄道事業によって日本から技術を獲得したいと表明していますが、ここでの「技術」とは単に高速鉄道を敷くだけではなく、様々なノウハウを指していると考えられます。


例えば「時間通りに運行する」「品質を安定させる」といった規律・ワークカルチャーです。現在インドでは1日2万本以上の列車が運行していますが、しばしば遅延が見られる状況です。また、設備の老朽化や整備不良による事故もあるなど、在来線の改善が急務となっています。そうした状況に対して、53年間の運行で死傷者0人という日本の新幹線システムを導入することで、在来線の技術が向上し、インド鉄道全体のサービス向上が進んでいくのではないでしょうか。

在来線の安全対策として約1兆7000億円の予算を設けるなどして、政府は既に手を打っています。それに加えて人材や文化育成といった海外の協力が必要な部分に関しては、高速鉄道事業を通して伸ばしていこうという狙いが伺えます。

高速鉄道を通して、インドの鉄道がより安心・快適に利用できるようになるんです!


②の通勤・商圏拡大については、都市間を「線」で結ぶ高速鉄道だからこそ生み出せる変化だと思います。

例えば、先ほど紹介したムンバイ~アーメダバード間には12路線が敷かれる予定ですが、これによって大都市近郊に位置する第2・3都市レベルに住む人々の通勤が便利になると同時に、そうした地域での商談がスムーズに行えるようになります。また、高速鉄道が通過する都市でのビジネス・観光が活発になることは言うまでもありません。


③の新たなビジネスについては、特に「駅開発」が挙げられると思います。例えば日本では「駅ナカ事業」と呼ばれるビジネスがありますが、「駅」って移動するための「手段」だけでなく、訪れたくなるような「目的」にもなりえる場所ですよね。新幹線のまでの時間つぶしに東京駅のGRANSTAで駅弁を買ったり、新大阪駅のエキマルシェでお土産を探すように、インドの駅でもそうした時間を過ごせたらより多くの人々に利用されることでしょう。

駅ビル・高架下や地下街を開発し、新設した駅構内や周辺に多くの商業施設の誘致を進めていけば、安心・安全な移動だけでなく、高速鉄道はインドの駅に娯楽性をもたらすかもしれません!

このように、高速鉄道は単なる新しい交通手段に留まらず、インド鉄道自体に変革をもたらし、また新たなビジネスの起爆剤になると考えられます!

では、その他のアジア各国ではどういった高速鉄道計画が進んでいるんでしょうか。確認していきましょう!

ASEANの現状


タイの在留邦人の数は64,285人とかなり多く、進出している日系企業数は4,567社にのぼります。(インドは2016年で1,305社)。 2012年から高速鉄道計画を持ち出し、現在各国への受注を検討している段階です。その中でもバンコク~チェンマイを結ぶ路線は日本の新幹線を導入することが最近決定しており、これから高速鉄道事業を通じて日本との繋がりがより深まっていくことが予想されます。

シリーズで初めて取り上げるベトナム。平成26年度調査における在留邦人の数は13,547人・日系企業数は1452社で、タイと同様に多くの日本人が滞在している国です(インドは9,147人)。アジアの中でも経済成長著しく、2000年以降は常に5%以上の経済成長率をキープしています。そうした経済成長に伴い、南北移動が激しくなったことで、それを支える交通インフラとして高速鉄道に着手することになりました。

さらなる経済成長を遂げるべく、両国が掲げた高速鉄道計画はどのようなものなのでしょうか。

タイ


まずはタイの高速鉄道計画について見ていきましょう!現在、5路線を計画しているタイの高速鉄道事業。どのように路線が引かれているのでしょうか。

御覧の通り、首都であるバンコク(Bangkok)に向かうように複数の路線が引かれています。総線路長は2279km(線路密度:0.0044)の予定です。鉄道の線路長が4,071kmでASEAN1位のタイですが、高速鉄道においてもASEANトップの距離を走る見込みなんです!首都・バンコクとその近郊都市間のアクセスをスムーズにする手段として、高速鉄道を建設しようとする狙いがあります。


現在5路線が計画されていますが、その中でも現在進められているのがタイを縦断する「バンコク~チェンマイ間」ルートです。長さはまだ未確定ですが、計画されている路線の中でも最長の700~750㎞(東京〜広島間くらい)を走る予定で、2022年開業を目指しています!既存のタイ国鉄だと12時間、バスでも9時間はかかるルートですが、同区間を250㎞で走る高速鉄道だと所要時間はわずか3時間半!既存アクセスの半分の時間で移動できるようになるんです!

以前「鉄道編」で、インドが人・モノの輸送手段を道路から鉄道に転換する「モーダルシフト」を推進していることを紹介しましたが、タイでもモーダルシフトが進められております。タイ市内の渋滞緩和や輸送の効率化等を目的とした都市交通の整備などが進められており、高速鉄道事業を通してモーダルシフトをさらに加速させようとしています。

ベトナム


計画が途中で倒れては再び持ち上がるなど、ベトナムの高速鉄道計画は一進一退の状況です。現在、ホーチミンと、首都・ハノイを結ぶ計画が進められていますホーチミンは人口800万人のベトナム最大都市で、同じくホーチミンも人口750万人を抱える同国第2の都市です。No.1&No.2である南北都市間のアクセスを改善することで、さらなる経済成長を狙っています。

 

総線路長は1,570km(線路密度: 0.0047)で、タイに続いてASEANで2番目の距離を走る予定であるベトナムの高速鉄道。東京~鹿児島間が約1350㎞なので、それ以上の距離を高速鉄道で移動することになります。現在この区間には国営鉄道が走っていますが、到着まで約30時間かかり、車中泊しなければならない状態です。もしこの高速鉄道が完成したら、所要時間は6時間にまで短縮されます!

しかし、飛行機だと所要時間は2時間弱であることから、移動時間だけでは高速鉄道を敷く意義が薄いようにも思えます。政府としては人々の経済水準向上に伴った旅客需要の伸びを見越して、長距離を高頻度で運行し、1度に大量の人々を輸送できる高速鉄道の旅客輸送能力に期待を寄せているようです。JICA調査によると2010年時点で1日約1000人程度である全国の旅客数は2030年に倍以上の2700人に増えることが予想されており、飛行機では賄えきれない旅客の受け皿として機能すると考えられます。

南北移動をスムーズにすべく、目指しているスピードは350㎞ですが、まずは200㎞での運行を実現化し、そこから徐々に速度を上げていく方針を政府は掲げています。まだ計画段階ですが、2015年の3月にベトナム首相が2020年、および2050年までのビジョンとして鉄道発展戦略を可決したことからも現実化する可能性は十分高いでしょう。

しかし、政府としてはまず既存の鉄道網の改善に着手し、それから高速鉄道を建設していきたいようです。従って、高速鉄道に関してはまだ受注先が決まっておらず、ハノイ-ホーチミン間で人やモノの輸送ニーズが高まるとみられる2030年半ばに完成される予想なので、私達がベトナムで高速鉄道の旅をする日はまだまだ先のことです。

 

以上、タイとベトナムの現状についてお伝えしました。初めて200㎞以上の列車が走る両国ですが、インドと同様に高速鉄道を敷くことで都市間の移動を改善させ、さらなる経済成長を狙っています。

インド タイ ベトナム 比較

これまで3か国に渡り、高速鉄道計画の全容とその進捗状況を確認してきました。そのデータをまとめたものが下の表です。

インドタイベトナム
総線路長 3979km2270km 1,570km
線路密度(km/km²) 0.00120.0044 0.0047
最高速度320km/h 250km/h 200km~350km/h

総線路長

世界第7位の国土面積を誇る、インドの広さが際立つ結果となりました。現段階の計画が着実に進んで「ダイヤの四角形」が完成した場合、その合計距離は9998km(線路密度:0.0030)にまで延びると予想されているので、ここからますます差を広げていくことが予想されます。

規模では約1700kmインドに負けるタイですが、5路線を設けることで国土全体に線路を敷こうとしていることが計画から伺えます。その点はインドの計画と似ています。これまでは首都・バンコクと地方都市との格差が指摘されていましたが、近年は地方でも近代的な商業施設が建つなど、地方都市の成長が進んでいます。そうした状況を踏まえ、首都圏とその近郊都市のアクセスを効率化するための線路計画だと考えられるでしょう。

一方、線路長距離自体はインドとタイに劣るベトナムですが、わずか1路線で1570㎞もの距離を走らせる計画が特徴的です。国土を縦断するルートが印象的ですが、大都市が国内の両端に位置するというベトナムならではのプランだと言えるでしょう。インド・タイと同様にこちらもスケールの大きな事業として注目できます。

 

線路密度

国の面積に対してどれだけ高速鉄道が敷かれるのかを測る「線路密度」に関しては、タイとベトナムの数字が目立っております。インドで「ダイヤの四角形」が完成したとしても線路密度は0.0030なので、ASEAN両国の方がより幅広く高速鉄道ネットワークを敷こうとしていることが分かります。インドに限らず、ASEAN両国もまた国内の移動を円滑にすべく、高速鉄道事業に力を入れていることが伺える結果となりました。

またここから、インドの場合は既存路線との併存を考えたプランだとも言えるでしょう。

インドタイベトナム
線路長65,000km4,071km2600km
線路密度(km/km²)0.020.00710.0078

こちらは各国の現在走っている鉄道の線路長と線路密度を示した図ですが、インドには既に線路長65,000kmを誇る鉄道ネットワークが確立されています。ですのでインドは「選択と集中」という戦略の下、高速鉄道を計画しているのだと考えられます。

最高速度

最高速度に関しては350㎞/hでベトナムがインドより30㎞/h上回っています!しかし、ベトナムは2020年の段階でまずは200㎞/hを出して、2050年までに350km/hで走行する予定なので、300㎞を越えることはまだまだ先のことです。したがって、スピードについてはインドがASEAN両国の先を行くことになりそうです。

現在のインド鉄道の最高速度が160㎞/hなので、高速鉄道が敷かれることで倍の速さがインドの鉄道で実現されます。また、タイトベトナムに関しても200km以上の鉄道が走るのは初で、劇的な変化だと言えるでしょう。

日本の新幹線を参考に挙げると、最速は東北新幹線の「はやぶさ」・秋田新幹線の「こまち」で320km/hです。つまり、高速鉄道開発の先進国・日本と同じレベルの高速鉄道がこれからアジア各国で走っていくんです!インドを筆頭に、今後アジア全体のスピード水準がどんどん上がっていくことを示唆する結果となりました。

 

以上のデータを用いて、インドとASEANに属するタイ・ベトナムの高速鉄道計画を比較してみました。どれも計画中の段階ですが、ほとんどのトピックでインドの高速鉄道が他国より優れていることがお分かり頂けたと思います。総線路長世界4位という「量」で圧倒してきたインドの鉄道が、高速鉄道によって「質」も獲得しようとしています!

まとめ

いかがでしたでしょうか。発展著しいASEAN のタイ・ベトナムと比較しても、インドの高速鉄道が上回っていることが分かって頂けたのではないでしょうか。安心してください、インドの高速鉄道はASEANに負けていませんよ!!

都市間の移動をスムーズにするだけでなく、既存の鉄道にも好影響を与え、新たなビジネスをインドに生み出す「高速鉄道」。インドで暮らす人々の交通移動だけでなく、ライフスタイルさえも変える可能性を秘めています。

冒頭でもお伝えした通り、インドでは初の試みです。言い換えると「ゼロ」からのスタートです。

そのため、課題は山積みです。プロジェクトを実行するための法律・制度の整備もそうですし、労働者のマネジメントや工程のスケジュール管理など、今までやったことのない作業の連続です。初めて新幹線を建設した1960年代の日本とまさに同じ状況です。

実際、これだけの労力を費やしてまで高速鉄道を作るメリットはあるのかという批判もインド国内ではあがっています。

しかし、日本では新幹線を開業させたことで、64年度に約1100万人だった年間の輸送人員は10年間で1億人を突破し、それに合わせるようにGDPは右肩上がりの成長を続け、世界第2位の経済大国へと変容しました。都市間移動をスムーズにし、鉄道全体のサービスを向上させ、ビジネス促進をもたらす高速鉄道もまた、インド全体の経済成長を伸ばす結果に結びつくだろうと私は考えます。

「高速鉄道」という今まで国内になかったものを作り出そうとしているインド。世界で初めて「ゼロ」という概念を作り出したことでも有名ですが、今度は「イチ」を生み出そうとしています!

いよいよフィナーレを迎えようとしているこのシリーズ。これまでインフラという切り口からインドの「可能性」について掘り下げていきました。今回扱った高速鉄道のように、その可能性が近い将来実現されることを考えるとワクワクしてきますよね!残りのインフラシリーズでも皆さんをワクワクさせるような記事をお届けしていきます!!

‹参照›

https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H67_R20C16A1FF2000/

https://www.iij.ad.jp/global/column/column77.html

http://pari.u-tokyo.ac.jp/event/policy_discussion/pari110610_rail.pdf

http://www.jterc.or.jp/koku/koku_semina/pdf/120321_2_ITPS_Matsumoto.pdf

http://www.asiaone.com/asia/thai-japanese-rail-link-chiang-mai-follows-china-model

https://www.quora.com/Would-you-prefer-a-bullet-train-over-a-flight-in-India

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/40129386b8213bbb/20170038.pdf

https://en.wikipedia.org/wiki/Planned_high-speed_rail_by_country#.C2.A0India

http://www.businesstoday.in/current/economy-politics/mumbai-ahmedabad-bullet-train-cost-japan-india/story/260280.html

http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20160119-OYT8T50092.html?page_no=1

http://www.livemint.com/Politics/uzhxIRblL1o2l9dqLkCPEM/AhmedabadMumbai-bullet-train-deadline-advanced-to-2022-Piy.html

http://www.globalconstructionreview.com/news/vietnam-probe-high-sp7eed-rail7way-betw7een-ho-chi/

http://newswitch.jp/p/10014

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