先進国の先を行く!?インドのリープフロッグ現象まとめ


皆さん、リープフロッグ現象という言葉をご存知でしょうか。

リープフロッグとは、文字通りLeap(跳ぶ)Frog(カエル)のこと。アフリカや東南アジアなど、いわゆる新興国の経済発展を象徴する言葉として、最近よく耳にします。

というのも、同国々の経済発展は、先進国の歩んできた道のりを、ただ追っているという訳ではないからです。新しい技術が取り入れられる際に、途中の段階は飛ばして、一気に最先端の技術に到達します

カエルが飛び跳ねる様子が、まさにこの状況を現しているという訳です。

インドはそんな急速な発展が、まさに今、様々な分野で起こっている国のひとつ。今回はそんなインドのリープフロッグ現象を、日本との比較も交えて見ていきたいと思います。

なぜ、最先端までひとっとびできるのか?

発展途上国のイメージは、技術もそれほどない、国民の所得も高くない、インフラも整備もままならない、そんな感じですよね。そのような環境下で、なぜ、最先端まで一気に発展できるのでしょうか?

先進国からの技術流入


日本を含め先進国の歴史を振り返ってみると、ニーズはあっても、そのニーズを満たす技術が追いついてない状態でした。だからこそ、技術開発を進め、時に他国の影響も受けながら、技術の進化と共に発展してきたわけです。

一方の発展途上国に関しては、技術はすでに先進国が持っています。後は、参入できる環境かどうか、利益の生み出せる魅力的な市場であるか、現地でそれらの技術が受け入れられるかどうかという部分ですよね。

容易に想像のつく理由ですが、ひとまず最大の理由はこれです。

法律や規制が未整備


冒頭でも書きましたように、確かに発展途上国ではインフラが十分に整っているとは言えません。しかし、だからこそ、新たなものを取り入れやすいという面もあるのです。

先進国では、十分なインフラが整っているが故に法律や規制も多いです。そういった厳格な規制が、新技術導入の際のしがらみにもなりかねません。

一方の発展途上国は、そんなしがらみが無いので、新技術をスピーディーに導入することが可能です。新しい何かを創る時には、土台が出来上がってしまっている場所より、何もないところの方が簡単ですよね?そういう原理です。

斬新なアイディア


必要最低限のものが十分に提供されていない国では、この状況を打破したいという思いから、斬新なアイディアが生まれやすいのではないでしょうか。

実際に、先進国よりも、もっと先を行くサービスを生み出している事例も存在します。

また2つ目でも説明したように、新しいものを受け入れる体制がある為、画期的な技術・サービスが登場すると、一気に普及するという訳です。

 

さて、リープフロッグ現象が可能になる3つの理由が分かったところで、実例をみていきましょう。近年、GDP成長率7%で推移を続けるインドでは、様々な分野でこの現象が起こっているんですよ。

EV(電気自動車)


近年、地球温暖化や大気汚染といった環境問題が深刻化しており、全世界が課題解決に取り組んでいます。各国でエコカーの技術開発が進み、それに伴い消費者の需要も高まりつつありますよね。

HV(ハイブリットカー)やPHV(プラグイン・ハイブリットカー)、FCV(燃料電池車)など様々な種類のエコカーが開発されていますが、国によって注力している車種は異なります。

さて、今回取り上げるのは、ガソリンを一切使わず電気のみで走る自動車、EVです。

HV:ガソリンエンジンと蓄電池の両方を備えた車。日系自動車メーカーが力を入れている。
FCV:燃料電池を搭載し、水素を原料として走る車。走行時に有害物質を排出しない。
EV:ガソリンを一切使わず、電気のみで走る車。走行時に有害物質を排出しない。

日本の普及状況

それでは早速、日本の普及状況について見てみましょう。下の表をご覧ください。


経済産業省によると、2014年度時点での普及状況はご覧の通り。次世代自動車に限っては、ほとんどをHVが占めており、日本でエコカーといえばHVというのが今の現状です。

EVは0.34%と、わずかな数字に留まります。様々な優遇措置を行ってはいるものの、価格や走行距離、充電スポットの整備といった課題が残り、普及するには至っていません。

そんな中、2030年の目標は半数以上を次世代自動車にすること。EVの割合が30%まで引き上げられ、これから徐々に伸ばしていきたい意向が感じられます。

多くの関係者を抱える日本の自動車業界において、急速すぎる発展は命取りです。下請けの部品メーカーなど、中小企業を守る目的もあって、緩やかにEVシフトしていきたい政府の考えがあるようです。

インドの普及状況

一方インドの自動車市場ですが、2014年の時点で50%以上がディーゼル車、残りのほとんどはガソリン車だと考えられます。EVはもちろんHVも含めたエコカーで言っても、その割合はほぼゼロ%だと言われています。

HVも含めた全体で見ると日本の方がはるかに普及は進んでいますが、近年、インドでもエコカーを推進する動きが出てきました。

といっても日本と同じ変化の仕方ではなく、インドはHVを飛び越えて、EVシフトを進めています。

モディ政権はHV車の販売には積極的ではなく、2030年までに新車を全てEVにするという、大胆な計画を掲げているのです!!

その計画の一環として、EVにかかる税金がかなり低く設定されています。HVが43%であるのに対しEVは12%と、30%もの違いがあるのです。単価の高い自動車でこの税率の差は、消費者の購買意欲にもかなりの影響を及ぼすことが予想されます。

タタ・モータースなどインド現地企業も、すでに技術開発が遅れているHVより、まだ勝負の見込みがあるEVに注力する意向を示しており、そんな現地企業のことも考慮した上での、EVシフトだと考えられます。

少々無謀とも思えるこの計画ですが、もし現実のものとなれば日系自動車メーカの方針にも、現在No.1の競争力にも、大きな影響が及びそうですね。

携帯電話

ポケベル、ガラケー、スマホと形を変えながら進化してきた、携帯電話。2007年にAppleが発売したiPhoneをきっかけに、近年はスマートフォンを持つ人が多いですよね。


日本の普及状況

それでは、日本の携帯電話の普及状況を見てみましょう。下のグラフをご覧ください。


こちらは、総務省が調査した2016年のモバイル端末普及率です。モバイル端末全体(携帯電話、スマートフォン)の普及率は83.6%。また、スマートフォンの普及率は56.8%です。

2010年から急激にスマートフォンの利用者が増え、今では小学生からお年寄りまで幅広い世代に普及しました。

インドの普及状況

インドの人が携帯電話を使っている姿、皆さんは想像がつくでしょうか。オフィスで働く人たちはもちろん、オートリキシャのおじさんや、ローカルマーケットで野菜を売っているお兄さんまで、実は多くの人が携帯電話を持っています。

ガラケーだけではなく、スマートフォンも都市部では当たり前になりつつあるんですよ。

(出典)世界情報通信事情

グラフをみて分かるように、2015年度の携帯電話普及率はなんと78.8%。日本とほぼ変わりありません。携帯電話の加入者数は10億人を超えており、中国に続く世界で2番目に大きい市場として注目を集めています。

また、グラフにはありませんが、2016年のスマートフォン普及率は16%と、かなり高い割合となっています。

【低所得層にまで行き渡る携帯電話サービス】

皆さんのインドのイメージでは、国民の約80%が携帯電話を使っているなんて驚きかもしれません。ではなぜ、インドでここまで携帯電話が普及したのでしょうか?

それはずばり、本体代、利用料金ともに、異常なまでに格安で提供されているからです。

近年、日本でも”格安スマホ”をうたい文句に、従来よりもかなり低価格のサービスが登場していますよね。しかし、日本の格安なんて比にもならないのがインドの格安です。


(出典)livedoor News

昨年7月、インド大手財閥のリライアンス・インダストリーズ(RIL)は、かなり強気の低価格戦略を打ち出しました。いわゆるガラケーですが、端末は実質無料で通話も無料、その名も「JioPhone」。

さらに、月額たったの260円でネットも使い放題とのこと。利益がとれているのか定かではありませんが、間違いなくインド人の注目を集めています。

多くの人がスマートフォンにシフトしつつある都市部ではあまり見かけませんが、田舎の方に行った時には、JIOという青いロゴマークをよく見かけました。格安プランによって、農村部の低所得層にまで、携帯電話サービスが届き始めているのが分かります。

【スマートフォンも格安だった!!】

(出典)JETRO BOP実態調査レポート

上図から分かるように、インドで販売されているスマートフォンの価格帯は、2000ルピー(約3400円)からで日本では考えられない低価格で販売されています。

もちろん機能の幅や品質はそれ相応なのでしょうが、それでもインドでは需要があるということです。

現在のスマートフォン普及率16%という数字は、製品サイクルでいうと初期採用者が購入している導入期です。今後は、成長期に入っていくため、急速に需要が伸びていくことが予想されます

農村部も含めてスマートフォンがインド全土に普及する未来も、もうすぐなのではないでしょうか。

モバイル決済

クレジットカードやデビットカードの登場によって、現金なしでモノが買えたりサービスが受けられる現代。そしてその次に登場したのが、財布なしでもそれを可能にしてくれるモバイル決済サービスです。

日本の普及状況

みなさん、日本はキャッシュレス化後進国ということを、ご存知でしたか?下のグラフをご覧ください。

日本の個人消費における決済手段の割合の推移
(出典:ITmediaビジネス2017/12/28記事)

2016年時点では、約半分の決済が現金支払いです。クレジットカード、デビットカード、電子マネーといったキャッシュレス決済の割合は、23.6%に留まります。

ネットショッピングなどでは、クレジットカードでの支払いが利便性も高く普及しているようですが、普段の決済ではまだまだ現金でのやり取りが多いようです。

次に、モバイル決済に関して下のグラフをご覧ください。


こちらは、フランスの調査会社であるIpspsが2016年末に行った、モバイル決済普及率に関する調査結果です。アジア諸国や南米、ヨーロッパなど、世界23ヵ国が対象になっています。詳しくはこちら

なんとこの23ヵ国中、日本は27%で最下位という結果でした。

日本は、高齢化社会のためにクレジットカードも含めて新しいシステムを受け入れるのが難しいと言われています。また、人口構成の問題だけではなく、日本人の国民性として新たなものを積極的に受け入れるよりは、リスクを避ける保守的な部分があるのも事実です。

インドの普及状況

さて一方のインド市場はどうでしょうか?先に説明した携帯電話の普及に併せて、モバイル決済もすごいスピードで普及しています。それでは、下のグラフをご覧ください。


なんとインドは世界第2位の普及率76%を誇っているのです!!

どの地域を調査したのか、農村部も含んでいるのかが明示されていないため、国全体をきちんと現した数字とは限りません。とはいえ、インドの小さな商店でもPaytm(インドで主流となっているモバイル決済サービス)のステッカーが貼ってあり、広く国民に利用されているのは事実です。

写真:日系ビジネスオンライン

インドでは、銀行口座を持っていないという人も多いため、必然的にクレジットカードの普及率は低くなります。(約5%ほど)そんな中、銀行口座を必要としないモバイル決済は非常に画期的なサービスで、一気に広まったというわけです。典型的なリープフロッグ現象ですね。

他にも、高額紙幣の廃止モディ政権が掲げるDegital Indiaなど、モバイル決済普及の背景には多くの要因が挙げられます。Palette内の別の記事で詳しくご紹介しているので、是非チェックしてみてくださいね!

医療アプリ~Docs App~

さて、最後にご紹介するのは、先進国を差し置いて、インドだからこそ生み出された新たなサービスです。

医療アプリと聞いて、皆さんどんなものを想像しますか?健康法などを知れるアプリ?病院を予約できるアプリ?薬が購入できるアプリ?きっと、これからご紹介するアプリは、皆さんの想像を超えていると思います。

Docs Appってなに?

インド工科大学卒業の2人が立ち上げたベンチャー企業で、病院・医師不足といった社会問題解決を目指しています。

Docs Appは、問診→診察→処方箋発行→薬の宅配、これらが全て行えるアプリです。そう、病院で行われる全てのことがこのアプリ1つでできてしまうのです!!


問診:病院に行くと初めに問診表を記入しますよね。それがすべてAIで行われます。実はこの時点で7割くらいは病気が判明できるのだそう。

診察:登録されている2000人以上のお医者さんとリアルに繋ぎ診察します。

処方箋の発行:その後処方箋が発行されます。ここまでが、たった30分で完了するのだそうです。

薬の宅配:あとは薬が届くのを待つのみ。急ぎの場合は、処方箋をドラッグストアに持っていくと購入が可能です。

さらに、診察時間は24時間対応、料金は平均2ドルというのですから驚きです。サービスを開始してまだ2年程ですが、毎日数万件の問診を行うまでに成長しました。

これからのDocsApp

写真:ASCIIビジネス

インドの医療市場は人口が多い分、超巨大です。しかし、病院の多くは都市部に集中しており、農村部ではたどり着くのにも一苦労、着いてからも2~3時間待たされるのは普通です。

また、医療規制が整っていないために医療費が安定しておらず、近年インドの医療費は上昇傾向にあります。そんな中、家で診察が受けられて、診察料が2ドルというこんなアプリに、ニーズが無いわけがありませんよね!?

誤診などの不安をどう取り除くかが鍵になってくると思いますが、国民の信頼さえ得られれば、巨大な市場環境を活かして急速に普及していくのではないでしょうか。AIを活用しているため、利用者が増えるほどに分析できるサンプルが増え、診察の精度は今後上がっていくと考えられます。

また、インドだけに留まらず、こういったサービスが先進国に逆輸入される”リバースイノベーション”が起こる可能性も大いにあります。日本の医療規制は途上国に比べると厳しいので、すぐに導入されることはないかもしれません。しかし、オンラインでの診察が世界の常識になる日も、そう遠くはないかもしれませんね。

病院施設というリアルなインフラが整う前に、さらに先に進んで画期的なサービスを生み出した、これもリープフロッグ現象の1つです。

もちろんインド在住の日本人もこちらのアプリは使えます。少し風邪を引いた程度なら、このアプリで気軽に診察を受けてみるのも良いかもしれません。大渋滞の中病院にいくよりも、よっぽど早く治療することができるはずです。

まとめ

いかがでしたか?今回は、日本とインドの普及状況を見比べながら、リープフロッグ現象についてまとめてみました。インド市場のスピード感や、想像以上に発展している様子がお分かり頂けたのではないでしょうか。

日本やその他の先進国が、何十年、何百年にもわたって歩んできた道のりを、発展途上国はいきなり最先端のところまで、飛び越えていきます。また、日本という豊かな環境にいると思いつきもしないような革新的なサービスが、ビジネスとして成功しているという事も分かりましたね。

さて、冒頭部分でご説明した通り、リープフロッグ現象が起こる理由は以下の3点。
  1. 先進国の技術流入
  2. インフラの未整備
  3. 斬新なアイディア
インドの実例をご紹介し終わったところで、以上の3点に加え、インドだからこそという理由を考察してみましょう。

それはズバリ、国民性。

この記事を書く中でふと思ったのが、日本がインドと同じような立場にあったとして、このように急速な発展が遂げられるのかという事。状況の変化に合わせてすぐに新ビジネスが生まれるか、それが消費者に受け入れられるかという事。私は、無理なんじゃないかな…と思ってしまいました。

インド人の特徴として、決断力・実行力・対応力が挙げられます。

用意周到、慎重タイプの日本人とは正反対と言っても過言ではありません。1度思いついたら即行動し何かしらの変化にもすぐ対応する、そしてそのスピードが異常なまでに速いのです。

例えば、2016年11月に突如起こった高額紙幣の廃止。もちろんインドでも混乱はあったそうですが、その後半年で急速にモバイル決済が発展しました。多くの問題点が指摘されていたこの政策ですが、今では何の不便も感じさせない程です。

このように一見マイナスに思える状況でさえ、自国の発展に繋げられるのがインドです。

中国やアフリカなどでもリープフロッグ現象は起こっていますが、新技術をこれ程スムーズに受け入れられるのは、インドだからこそではないでしょうか。

もともと巨大な市場である上に、このような柔軟な受け入れ態勢があるスピーディーに発展し続けている、これこそ世界中がインドに注目する所以です。そう考えると、インドの可能性は本当に計り知れませんよね。

最近、インドで起業する人が増えているのも魅力的な市場だからこそですし、そのような動きが、さらなるインドの発展に繋がっています。

そんなインド、次はどんな変化が起きるのでしょうか?そしてどんなビジネスが生まれるのでしょうか?日本にとっても重要なパートナーであるインドの発展に、これからも目が離せません!

参考資料

経済産業省「自動車産業を巡る構造変化とその対応について」

東洋経済オンライン「インドのEV計画」

総務省 平成29年版 情報通信白書

ITmedia 「日本のキャッシュレス化を考える」

Ipsps

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