挑む12億人の市場!無印良品に続く小売業のインド進出!

H&M 、ZARA、GAP、Forever21。日本で良く見かけるファッション店名ですよね?インドの大きなショッピングモールに行くと、日本同様にこれらのショップを見かけます「インドでも日本と同じようにショッピングできるのか!」そうなのですが、背景にはインドならではの進出の難しさがあるのです。なんと日本ブランドはまだ無印良品だけなのです!

日本でよく見る店がインドにも?


先ほど挙げた店名。どれも日本ではなじみのある名前ですね。これらはインドに進出している小売業の企業名の一部です。H&M とZARAが北欧スウェーデンの企業で、GAPとForever21はアメリカの企業で、その他にも世界各国の企業がインドに進出しています。一方、先に述べたように20168月にようやく日系企業では初で「無印良品」がインドに1店舗目を開きました。

 

カレーの「本場」インドに日本のカレーが挑む?

今年7月に、カレー店チェーン「CoCo壱番屋」もまた時期は未定ですが、インドに進出すると発表しています。カレーの「本場」といわれるインドに、日本のカレーが挑むというなんとも興味深く、そして目が離せないニュースです。近年は海外事業の拡大に力を入れているCoCo壱番屋。


図1:CoCo壱番屋 海外店舗数・売上高推移 (参考:壱番屋の2016年5月期第2四半期決算説明資料)

東アジア、東南アジア、米国などで出店を進めており、2016年6月末時点で海外店舗数は160店に達しており、 海外売上高も順調に伸びているようです[1]。海外の店舗では、現地の事情に合わせて多少はカレーの味を変えているようですが、基本的には「日本のカレー」で勝負しています。日本の味は海外でも人気が高まっていることから、インドでの期待も高まります。

インドの小売市場は、インド民間調査会社によると、年間で2桁増の成長が続き、15年度は6000億ドル(約60兆6千億円)を超えています[2] 。日本の市場が小さくなっていく中で、海外進出を考えている企業は、当然ながら増えています。日本の小売業界でトップのイオングループはカンボジアのプノンペン、ベトナムのハノイなどに大型店をオープンさせています。同じ業界でトップクラスのセブン & アイ ホールディングスやユニクロやGUなどで有名なファーストリテイリングもインドへの進出はまだ行っていません。

中国、ベトナム、タイやカンボジアなどのほかの東南アジアにおいては、海外進出を成功させている日本の小売業ですが、巨大な市場はあるものの、インドでも同じ様に上手くいくというわけではないのです。どんな背景がインドにはあるのでしょうか?

 

進出困難なインドの特徴とは?!外資規制が小売業に強く残る

でも一体なぜ、こんなにもインドの進出は障壁は高く、多くの企業が苦戦するのか。そこにはインド特有の理由が潜んでいます。順番に見ていきましょう。

1点目として、輸入の際の煩雑な手続きです。インドの複雑な法律をクリアするための契約書作りにも時間がかかります。無印良品の場合は、約4年も進出の準備にかかったといっています。さらに、同社は、インドでは商品を持ち込む際に商品の価格、内容を細かく表記したラベルを取り付けることが義務付けられているため、現場スタッフは開業直前まで通関の保税区でラベルの書き換え作業に追われたとも言っています。

2点目として、無印良品のような単一ブランドの外資小売りには、現地調達が必要だということです。外国資本100%出資の場合には、現地企業にて原料の3割以上を調達する必要があります。これはなかなか難しいのが現状で、相手先を探すのにどの企業も苦労しているといわれています。

そして3点目として、インフラ面についてです。特に流通、物流、税制における課題が挙げられます。例えば、インドは国土が広大であるため、多くの中間業者を介すため流通は非効率的です。また、州を越えて商品を販売する際に、州またぎ税(間接税の一種)が課される複雑な税制への対応も課題となっています。


図2:インドの小売り分野の外資規制 (参考:日本経済新聞「インド小売業、外資の参入阻む規制『緩和』」2016年4月22 日)

インドは巨大市場としてのポテンシャルは高いものの、外資規制や流通インフラの未整備などの問題があり、近代小売の拡大にはまだ一定の時間がかかるものと思われます。

 

インドへの世界の小売業進出事例


図3:インドへの進出小売企業一覧

インドへの世界の小売業進出事例実際に世界的に有名な企業はどういったものがあるのでしょうか?日本でも比較的よく目にするものを取り上げました。

 

GST導入でインドの小売業は今後どうなる?

2016年8月3日にインドでは税制度改正案が上院にて可決したと大きなニュースになりました。簡単に言うと、新たに物品サービス税(以下、GST)という税が導入され、中央政府・州政府の各種間接税が全国的に一本化されるというものです[5] 。

現在インドは29に分かれています。アメリカの50州をイメージしていただけると分かりやすいかと思います。インドでは、中央政府に納める税と、州政府に収める税の二種類あります。それに加えて、各州政府が独自の税制度を持っており、税率や手続きが異なっています。そのため、これまでは複雑な間接税体系に企業は苦戦していました。


4:現行の間接税と新たに導入される物品サービス税


しかし、GST導入によって、各州間の物流の円滑化輸送コストの大幅な削減が見込まれるのです。さらには、税務処理コストの削減各地域への店舗展開の簡易化といったメリットもあります。したがって、州境を越えて物品を輸送する際の納税手続きが省略されます。GST 導入によって今後インドにおける小売業界にて、外資企業のインド進出がしやすくなると考えられています。早くて2017年の4月からの導入が見込まれています。

 

まとめ

いかがでしたか?インドにおける小売業について、またインドへの小売業の進出の難しさは理解いただけましたでしょうか?世界の中でも、一番と言って良いほど巨大な市場を持つインドに、各国の企業も海外事業展開のため、虎視眈々とインド進出を狙っています。日本企業も海外の企業に負けない戦略の構築が必要になるでしょう。今後もインド市場に注目していくことが大事になるはずです。

参考
[1]マイナビニュース「インド人にウケるか? カレーのココイチが本場に挑戦」2016年7月8日
[2]日本経済新聞「『無印良品』インド出店 日本の小売業で初 」2016年8月6日
[3]Record China 「無印良品、インド市場へ進出=ZARA、GAP、H&Mも1号店オープンへ」2015年6月19日
[4]インド進出ポータル「Gap、インド初の店舗をデリーとムンバイに計画」2014年9月18日
[5]HSBC投信株式会社「インド:物品サービス税(GST)導入へ、上院で法案可決」2016年8月4日

 

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