※こちらの記事は2016年6月に作成した記事に、2022年11月10日時点の最新情報を加筆修正して再度公開しています。
インドの気象当局などによると、2022年11月4日時点でインド首都ニューデリーのPM2.5の濃度がWHO=世界保健機関基準の30倍の数値を記録しました。
インドの大気汚染については世界的にも取り沙汰されており、このような数値を目の当たりにすると、やはり不安になってしまいますよね。
そもそも、大気汚染の原因とされているPM2.5 やPM10とは何でしょう。なぜ体に悪いのでしょうか。そして、大気汚染から身を守る方法はないのでしょうか。今回は、インドの大気汚染と対処法についてご紹介します。
インド大気汚染の指標となるPM2.5、PM10とは
インド発のAQIアプリでは、以下のようにPM2.5とPM10、その他の指標でオンタイム、エリア別での大気中の成分データが開示されています。PM2.5 とは
PM2.5とは直径2.5μm以下の非常に小さな粒子のことです。1μm(マイクロメートル)は1mmの1000分の1、勿論目には見えない程の超微粒子です。PMは「Particulate Matter(粒子状物質)」の頭文字をとった言葉です。このPM2.5は単一の物質ではなく、炭素成分、硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩のほか、ケイ素、ナトリウム、アルミニウムなどの無機元素などが含まれます。
これらの物質は、ボイラー等のばい煙を発生する施設、自動車、船舶等の移動発生源、塗装や印刷等のVOCを発生させるものなど、多種多様な人為起源があると言われています。さらに、インドでは木材や肥料の野焼き、家庭燃料としての牛糞燃料も大気汚染原因として挙げられており、汚染物質は多岐に渡ります。
PM10とは
PM10とは、直径10μm以下の粒子です。PM2.5に比べて粒子が大きく、自然の粉塵、煙、花粉などが該当します。大気汚染の体への悪影響は?
PM2.5は粒子の大きさが非常に小さいため、肺の奥深くにまで入り込みやすく、ぜんそくや気管支炎などの呼吸器系疾患や循環器系疾患などのリスクを上昇させると考えられています。特に呼吸器系や循環器系の病気をもつ方、お年寄りや子どもなどは影響を受けやすいと考えられています。長期的には肺がんをも引き起こす可能性があると指摘されています。
インドの大気汚染データ
スイスの調査会社IQエアによると、2021年も、インド・ニューデリーの大気汚染が世界の首都で最も酷い状況であったことが発表されています。下の表は、PM2.5の数値と人体被害の関連についてです。
指数100以下はリスクが低く、100〜200が気をつけるレベルまたは健康に害を及ぼすレベル、300以上は危険レベルであると設定されています。
そして、こちらがWorld Air Qualityが示すインド・ニューデリーの2022年11月7日12時の数値です。本格的に大気汚染が始まり、空にも靄がかかり始め、日増しに汚染が目に見えてわかるようになってきました。
続いてこちらはニューデリーのお隣、グルガオン です。多くの日系企業が拠点を構えるこの都市ですが、比較的ニューデリーより低い数値となっています。健康被害が懸念される状況であることに変わりはありません。
*これらの数値は、交通量やpm2.5の原因となる商業施設、家庭での燃料の利用によって異なります。
2021年在印アメリカ大使館の調査をまとめたStatista のデータによれば、10月後半から数値が徐々に上がりだし、11月には危険レベルに達していることが読み取れます。
汚染の主な原因は、気温の下がる11~2月の間に、周辺の農村部で広範囲に行われる野焼きの煙や、年々増える自動車、特にディーゼル車の排ガス。そして貧困層においては調理や暖房などで木材や固形燃料の消費が増えることも原因の一つと言われています。
冬場は風が弱まり空気が滞留しがちであり、降雨量が少ないことも、深刻な大気汚染を加速させています。
インド大気汚染の予防と対策
この時期限定とはいえ、なるべく快適にインド生活を送りたいですよね。インド政府もこの事態を深刻に捉え、下記のような施策を発表してきました。1988年:環境汚染防止局(EPCA)の勧告により、裁判所は市内のバスをディーゼルからCNGに変更する判決
2010: BS-IVベースの車両が必須に
2014: 連邦環境省が大気質指標を開始
2016: アルヴィンド・ケジュリワル氏の公約
- AQI値が危険レベルの間、デリーの学校は閉鎖
- 建設・解体工事を5日間停止
- ディーゼル発電機は10日間停止するよう要請
- 環境部門は、市内での落ち葉の焼却を監視するための申請要請
- 道路のバキュームクリーニング計画
- PM10の数値が高い地域では、散水計画
- 自宅待機
- 電気自動車の普及と製造を促進
- 15年以上経過した車には罰金
- ホットスポットにスモッグタワーを設置
- 2021年までに、デリー地下鉄の電力は100%太陽エネルギーで賄う
2017: Odd-Even(奇数車偶数車)施行。駐車料金が課され値上げされたが、適切なシステムがなかったため、この制度は失敗に。クラッカーの禁止
2018年:市内に9つの人口ホットスポットが選定され、Anand Viharが公害のホットスポットに選定
2020年: 10人の大気汚染チームが発足。Green Delhi Mobile Applicationからの苦情を取りまとめ、課題解決を遂行するのが主な業務。
Pallete 編集部からは、おすすめの大気汚染対策方法をご紹介します。完全に汚染を遮断することは難しいですが、リスクの軽減が期待できるのではないでしょうか。
長期間の運動や外出を控える
外に長くいればいるほど、PM2.5を吸い続けてしまいます。また、激しい運動などは汚染度の高い夕方の時間を避けて行うのが得策でしょう。外出・換気を控える
World Air Qualityのリアルタイム大気質指標などをチェックして、拡散量の多い日は外出や窓の開閉をなるべく控え、家の中に取り込む量を少なくするようにしましょう。ドアや窓の目張りをするーインドの家は隙間も多く締め切るだけではあまり効果がなく、日本から目張りテープを買ってきて冬の間は隙間を防ぐようにしている人もいるようです。
高性能マスク(超微粒子の侵入を防げるマスク)を着用する
目に見えない超微粒子レベルのPM2.5は、普通のマスクでは防ぐことが出来ません。そのため、鼻やあご、頬等にフィットするような高性能マスクがいいでしょう。マルシェ等のスーパーマーケットやアマゾンインディアではインド在住日本人や韓国人の間で人気なデザイン性のあるVogMaskや、ケンブリッジ社のN95,N99マスクが購入できます。(両ブランド共洗濯し再利用可能、お子様向けのサイズもあります。)
また、ユニ・チャームのマスクもインドで購入できます。マスクのほかに、サングラスやスカーフも効果的です。
空気清浄機を購入する
Dysonや、Philips、Honeywell(アメリカのブランド)の空気清浄機はフィルター含めアマゾンインディアで購入可能です。DaikinやSharpの空気清浄機もインドで購入できるようになりました。各社20,000ルピー 前後で販売しています。洗濯物は室内で干す
室内干しを快く感じない方も多いと思いますが、室外で干してPM2.5を室内に取り込むよりも、室内干しをした方がいいでしょう。またインドは、雨季以外は日本ほど湿気が多くないので、部屋干しをしてもカラッと乾きます。うがい、手洗い
外出から帰宅した際は念入りにうがい、手洗いを心がけましょう。少しでも、体内に取り込んでしまう可能性のあるPM2.5の量を減らすことが目的です。まとめ
完全に大気汚染から逃れることは難しいものの、日々の心がけやマスク・空気清浄機等の利用で、快適なインド生活を送れると良いですよね。この事態をインド政府も深刻にとらえているため、改善の取り組みにも期待が膨らみます。日本もかつて、高度経済成長期に様々な環境問題に直面してきました。インドもまた、急激な成長を遂げている現在、大気汚染は受け入れざるを得ない社会課題なのかもしれません。
政府の迅速な対応を期待し、インドの急成長を肌で感じながら、一日も早く青空が見えることを皆さんで願いましょう!
▼大気汚染を映像でご覧になられたい方はこちらへ
こちらの動画で、大気汚染のリアルがご覧いただけます。(提供基:チャロブラザーズ)
参照元
https://www.aqi.in/dashboard/india/delhi/new-delhi