世界には英語をビジネスの現場で主言語とする国はいくつかありますが、実はインドもその一つです。Palette編集部や、インドで日本人が働く職場の多くでは英語が共通語になっています。
しかし、インド英語のイメージはあまりポジティブではなく、「インド英語は訛りが強い」「特有のヒングリッシュでしゃべる」などと言われており、故に、インド英語はグローバルビジネスの基準では使えるないと思われている日本人も多くいます。
それもそのはず。なぜなら、インドを知っている人の多くは、テレビでインドのおもしろネタをみた。インドに旅行でいってローカルを回った。日本で働くインド人と接している、といった方が多く、現在のインドのビジネス現場を体験している方が少ないからです。
ここでは、インドのビジネスの現場の英語が国際レベルに向上している背景に触れ、英語を母国語にするIndo-Angliansの実情と、実際インドで仕事をしている日本人へのインタビューも交えてお伝えしていきます。
インド都市部では英語のみを喋る人が150万人
インドの都市部には「英語のみを話す人」「英語が第一言語の人」「英語が第二言語の人」の人口が急速に増加しており、「英語のみを話す人」に至っては、既に150万人居ると言われています。こういった人々は一般的に教育水準が高く、主に欧米式の教育様式に乗っ取ったインターナショナルスクールや英語を主体とした教育プログラムを経ている、更には、海外での留学経験などがあるため、非常に流暢な英語を喋ります。
インド英語における新カースト
上記でご紹介した「英語のみ話す人」「英語が第一言語の人」「英語が第二言語の人」のインドでの割合は、下記の図の通りになっています。引用元:India has a new caste for native English speakers only
それでは、それぞれの用語について解説します。IAs(Indo-Alglians)=英語のみ話す人
インドの大都市の限られた都市に住み、子供の頃から家族間の会話言語も英語のみで行われ、思考も英語で行われる人々の事。過去10年の間に急速に増加し、5~7年後には倍増していると予測されています。EFs(English Frist)=英語が第一言語の人
IAsと同様に英語を第一言語として使用するが、インド独自の言葉も喋る事が出来る。ECs (English Comfortable)=英語が第二言語の人
インド独自の言語を日常的に使用し、学校などで英語を学習し、「英語が喋れる」と言う人。そして、急速に増加するIndo-Anglian人口により、ソーシャル(社会)やビジネス、カルチャー(文化)の面でも様々な変化が起こってきています。
ソーシャル(社会)の変化
インドと言えば、カースト制が有名で、基本的には同じ階層のカーストの人としか結婚は出来ないと言われています。Indo-Angliansは、主に上位階層のカーストですが、彼らはカースト制に重きを置かず、違う階層のカースト同士が結婚する事もあります。下位カーストの人がこの様にIndo-Angliansと結婚すると、今まで自分が信仰していた物(カースト、宗教)をIndo-Angliansに合わせる傾向があります。更にインドでは宗教上ベジタリアンが多い国で、結婚の際もパートナーが同じ嗜好であるかがとても重要ですが、Indo-Angliansはそこも重要視していません。パートナーが肉食でも、ヒンドゥー教で神聖な動物である牛を食べる相手であったとしても受け入れる事が多いです。
ビジネスの変化
インドのビジネスの現場で使われる英語がグローバル基準に引き上がっている背景には、Indo-Anglians人口が増加していることに関係しています。まず、Indo-Anglians人口が増加するにつれ、インドの教育環境に変化が起こりました。
従来、インドの教育は詰め込み方式、更に人口が多い故の超競争教育でしたが、より欧米式のゆとりある教育方法を主体とした学校が1990年代より続々と出来始めました。
また、英語を主要言語としてする学校(English-medium)も増加したことも、日常的に英語を使用する風習が定着してきた一つと言えます。
Indo-Angliansがこういった新たなカリキュラムや学習環境の中で勉強したのち、インド最高峰の大学であるインド工科大学などに入学、その後、アメリカやイギリスの大学や大学院へ留学し、海外で就職、またはインドへ帰国し多国籍企業に就職したり、スタートアップを立ち上げるケースが増加してきました。
つまり、幼少期から英語を主体とした環境で育ってきているのですね。
カルチャーも変化
インドでは、日本と比べ非常に宗教に重きを置いている人が多く、かなり保守的な考え方の人が多いのは実情です。しかし、上記でも書いた通り、Indo-Angliansに限っては宗教に重きを置いてない傾向があり、更に海外の風習に大きな影響を受けている人が多いため、こう言った人達と働く、多国籍企業の現場では、私たち日本人が感じるカルチャーにおけるギャップも少なくなっています。
Indo-Angliansは、より欧米的な嗜好を持ち、更に非常にステータス好きな人が多く、有名ブランドの商品を持つ事自体が自身のアイデンティティと捉えています。
例えば、インドにもオーガニックを謳う食品が急増していますが、この背景にはIndo-Angliansのステータス思考が関係しています。オーガニック食品と言うプレミアム金額を払う事で他とは異なるというステータスと感じているのです。
インド在住者が語る、インド英語のリアル
実際3年間インドに生活をする中で、Indo-Angliansはもちろん、EF、ECの人達、英語の喋れない人達等、沢山の人に出会いました。Indo-Angliansに関しては、喋る英語はアクセントも全く無く、考え方も欧米に近いものがあり、日本人の私としてはとても付き合いやすい人たちです。EF、ECの人達に関しても英語も上手に喋り、少しアクセントがあったり、言い回しが独特な事がありますが、こちらがある程度英語が出来れば理解することはでき、耳が慣れれば問題ありません。
Sさん マーケティング会社勤務
わたしの経験では、「EFs(English Frist)=英語が第一言語の人」にしか会ったことがないと思います。
EFsの人に対して、覚えたてのヒンディー語で話しかけたら、英語で返されましたことがあります。一部のインド人では、英語をしゃべることがステータスの一つなんだなと感じました。ビジネスの現場では、尊敬の意味を込めて英語で話しかけるが正しいのかもしれません。
EFsの方々は、インド英語特有のイントネーションの特徴は感じますが、海外での経験のある人ほど、日本人にわかりやすい英語をしゃべるように感じます。
20代〜30代の層で多いなと感じているのですが、企業家や多国籍企業で働くインド人で、中高生の頃から海外で就学して、インドへ戻ってきたというパターンの人が増えているなと思います。そういった方々の英語は完全にインターナショナルですね。価値観やコミュニケーション、ライフスタイルも含めて。
Mさん 製造業勤務
わたしの周りには、「EFs(English Frist)=英語が第一言語の人」が多いですが、そういった人たちの子供は今回の記事の通り、幼少期から英語がメインの環境となるインターナショナルスクールで就学しているパターンですね。若い年齢になればなるほど、わかり易く、国際レベルの英語を話す方が多いと感じます。
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Palette編集部のあるハリアナ州、かつ日系企業で働くビジネスマンには「EFs(English Frist)=英語が第一言語の人」が多い印象を受けますね。
変化著しいインドでは、言語のレベルさえも数年単位で変化しています。今のインドのリアルを、自分の目でみてみませんか?
参考記事
https://qz.com/india/1198086/india-has-a-new-caste-for-native-english-speakers-only/
https://medium.com/@sajithpai/we-got-into-iit-iim-but-our-kids-won-t-17f15f5e9543