インドとASEANインフラ比較シリーズⅢ ~電気編~


 もし電気がこの世に存在しなかったら、きれいな星空が毎日見れてインスタ映えもするのにな~。

いやいや、電気がなかったら携帯も使えませんよ!インスタ映えという言葉が流行する現代社会ならこんな会話、実際にありそうですよね。ですがインスタ関係なく「電気」という存在は私達の生活に不可欠なものとなっています。前回の鉄道編に続き、第3回目の今回は私達の生活を劇的に便利にしてくれる電気というインフラを取り上げます。電力の整備状況は生活の便利さに直結します。是非ご自分の目でインドの電力整備がどこまで進んでいるのか確かめてみて下さい!もちろん今回もインドとASEANの現状を合わせて紹介します!

インドの電気事情


インドは長年の電気不足という問題を抱えており、それが経済成長の足かせとなっています。1991年を期に、電力事業は民間に開放されるようになりましたが、電力不足は改善されず現在も大きな課題となっています。実際にインドの電力におけるインフラ未整備の割合は61.2%となっており、電気に関する整備が進んでいないことがデータからも分かります(日本は0%)。それではインドの電力に関する基本情報を見ていきましょう。下記の表をご覧下さい。

 

電力インフラ
未整備率
人口1人当たりの
年間消費電力
発電量最終消費電力ロス
(1-総発電量/最終消費)
61.2%879kWh148.4万GWh86.8万GWh23%

インドは電力の需要に対して全国平均5%ほど不足しており、依然として4人に1人が電気を使用できない状態にあるとされています。人口1人当たりの年間消費電力は879kwhで、日本の約10分の1に過ぎません。特に南部では電力不足が顕著で、ウッタル・プラデシュ州では14%、カルナタカ州では9.5%の不足率を記録しており、平均を上回っています。

ただ都市部ではインフラ整備がすすんでおり、停電はあまり起きません。不足率はインフラ普及が進むグジャラート州は0%、日本人駐在員が多くいるハリヤナ州は0.6%となっており、全国平均よりかなり低く数字を見れば日本とほとんど変わらない水準まで整備が進んでいます。

実際に私が住んでいるハリヤナ州のグルガオンは、電気に関する心配はほとんどありません。とはいえ停電自体は週3ほどのペースで起きます。心配がないと言った理由は、停電が仮に起きたとしても5秒ほどで復旧する小規模なものとなっているからです。なぜならほとんどのビルやマンションには自家発電システムが備わっており、停電対策がばっちりしてあります。生活に支障が出るほど大規模な停電はまず起きないため、電気に対して心配することはありません。

インド国内の電気事業者による1年間の総発電量は、約148.4万GWh(1GWh=1000000kWh)となっており、日本の102万GWh を少し上回っています。それに加えブータンから4.794GWhの電力を輸入しています。最終的に消費される電力は86.8万GWhで、総発電量のうち消費されない、いわゆるロス分の割合は23%と日本の5%と比較してかなり高い割合となっています。その原因は電力設備の老朽化や発電の非効率性であると言われています。

政府のとりくみ

2014年に当選し、大統領に就任したモディ首相は電力整備を進める決意として、次のような公約を掲げました。「1日24時間・週7日停電することなく電気を供給する。」

実際に第12次5ヵ年計画では、インフラ整備に56兆ルピー(約112兆円)を投資しており、そのうち電力部門にはその3分の1に相当する18兆ルピー(36兆円)が充てられています。もちろん投資だけではありません。下記のような改革も積極的に進めています。
  • 火力発電の電源となる石炭の割り当て方法を見直し
今までは国産石炭の割り当てにおいて、公営企業が優先され不公平でした。その企業のいくつかは発電効率の悪いものもあったため、電力不足と環境問題を考慮し効率の良い発電所に優先的に石炭が割り当てられることになりました。
  • 配電効率化
都市部の配電ロスの低下を目的とするプログラムです。配電インフラの強化、IT化、人口密集地域の配電地中化を行なっています。およそ6億ルピー(12億円)の予算をつぎ込んでいます。
  • 地方電化
未電化村1万8,452村、未電化世帯5,000万軒を電化するために、変圧器や配電変圧器の強化、電柱の設置などを進めています。予算額は7億5,893万ルピー(約15億円)

以上の3つが政府が主に行なっている改革です。これらの改革を行なうことで、電力不足の解消を実現しようとしています。

 

ここまで政府が整備に力を入れる理由は電気普及に伴う需要の拡大によって経済を活性化させる狙いがあるからだと考えます。発展途上国において、電力消費量と経済成長には密接な相関があることが分かっています。つまり電力消費量が上がれば、経済成長もそれに伴い加速するという法則です。

インド政府は地方電化を行なうことで、まずは国民生活に電気を普及させたいのではないでしょうか。電気の普及はLED電球や蛍光灯のような必需品だけでなく、洗濯機やエアコンなどの新たな需要を生み出します。それら電化製品が普及していくことは電力消費量上昇に繋がり、かつ購買活動活性化に伴う経済成長も見込めます。つまり上記の法則どおりの結果が見込めるということです。以上の理由から上記のような改革を行なっているのではないでしょうか。

 

インドと再生可能エネルギー

次にインドの発電方法の構成比を見ていきましょう。下のグラフをご覧下さい。


 

参照:https://sustainablejapan.jp/2016/12/31/draft-national-electricity-plan/24952を元に筆者が作成

発電方法の割合のグラフです。水色の石炭のシェアが80%近くを占める一方で、黄色に塗られた再生可能エネルギー(再エネ)の欄が目立っていると思います。実はインド、再エネを利用して発電した割合が6%あるんです(日本は3.2%)。さらに電源別発電容量では全体の12%を占めています。インド政府は電力供給源の確保や環境問題への対応として、風力や太陽光といった再エネを利用した発電に力を入れているのです。

2009年の「国家気候変動計画」では、再エネが地球温暖化防止対策の中心に据えられ、かつ電力不足の解消や地方電化の手段として積極的な再エネ導入を図っています。その効果があり世界的に見ても再エネを利用する発電設備が多いです。下の表をご覧下さい。

参照:http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1610/28/news023.html

この表は「再生可能エネルギーによる発電設備の増加予測」です。左の棒グラフの2015年のデータには先進国や他のBRICSと並んで、インドが上から3番目に記載してあります。つまり日本や英国という先進国に劣らないほどの再エネによる発電設備を誇っているということです。

これらの努力によりもし仮にCO2排出量を減らすことが出来れば、経済発展とCO2削減を両立したモデルとして世界にインド=クリーンというイメージを植え付けることができ、特に環境問題に関して国際的発言力を強めることができると考えます。

ASEANの現状

今回取り上げる国はインドネシアとタイです。両国には多くの日系企業が存在しており、インドネシアに進出している日系企業数は2,021社、タイには4,567社と両国ともかなりの数存在しています(インドは2016年で1,305社)。また平成26年の調査における在留邦人の数は、インドネシアには17,893人、タイに64,285人とこちらもかなり多いです(インドは9,147人)。そんな著しい経済の成長を遂げるASEANの一角を担い、日本とも関係の深い両国の電気整備はどこまで進んでいるのでしょうか。

インドネシアの現状


インドネシアでは観光地であるジャワ・バリ島の電力消費が激しく、全体の7割強を消費しており、電力の需給バランスが崩れかけています。実際にスマトラ島をはじめとする島々ではすでに電力不足が原因の停電が起きています。今後さらなる電力需要の拡大に対応するために、政府は新たな電源を開発していく必要に迫られています。インドネシアの電力に関する基本情報は以下の表の通りです。

電力インフラ
未整備率
人口1人当たりの
年間消費電力
発電量最終消費電力ロス
41.9%679kWh19.5万GWh17.5万GWh11%

インドネシアの電力インフラ未整備率は41.9%、およそ半分ほど整備が進んでいる状況です。発電量は19.5GWhとなっており最終消費は17.5万GWh、電力ロスの割合は11%とインドに比べ、効率よく電力が使えていることが分かると思います。


 

参照:https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/7e86a725b4b62adf/20150019a.pdfより筆者が編集

上のグラフは発電方法の構成比です。比較的安価な化石燃料を電源にして発電する火力の割合が90%近くを記録しています。そのうちコンバインドサイクルと呼ばれる発電方法が22%を占めており、残りの70%が石炭を電源にした発電です。これらを合わせ88%火力による発電を行っています。また再エネを用いた発電も行っており、そのほとんどが地熱発電です。

タイの現状


タイでは1980年代からインフラ整備が盛んに行われています。電力整備もその例外ではありません。そのため電力整備がインドと比較してもかなり進んでいます。タイの電力に関する基本情報は以下の表の通りです。

電力インフラ
未整備率
人口1人当たりの
年間消費電力
総発電量最終消費電力ロス
5.1%2,315kWh16.6万GWh16.1万GWh3%

タイの電力インフラ未整備率は5.1%、かなり整備が行き届いている状況です。人口1人当たりの年間消費電力も2,315kWhとなっており、電気が国民の生活に普及していることが分かります。発電量は16.6万GWhとなっており最終消費は16.1万GWh、電力ロスの割合は3%とほとんどロスがないということが分かります。電力整備が質の部分でも進んでいるということを証明していると思います。

 

参照:https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/7e86a725b4b62adf/20150019a.pdfより筆者が編集

インドネシア同様、火力発電の割合がかなり高くなっています。タイでは今後2030年までに火力発電の占める割合10%近く削減する計画があります。インドと同じく環境に配慮した発電を実現したい考えです。

インド インドネシア タイ 比較

電力インフラ
未整備率
人口1人当たりの
年間消費電力
総発電量最終消費電力ロス
インド61.2%879kWh148.4万GWh86.8万GWh23%
インドネシア 48.9%646kWh7.2万GWh5.9万GWh19%
タイ5.1%2,315kWh16.6万GWh16.1万GWh3%

電力インフラ未整備率

タイがダントツで整備が進んでいますね。経済成長が進んでいるインドとインドネシアですが、やはりこうして数字を用いて整備状況を見るとまだまだ十分ではないことがわかります。ただ両国とも都市部を中心に徐々に整備が整ってきているのは事実です。さらに日系企業のオフィスはおおよそ市街地にあり住宅もその周辺にあることから、現地で働く場合そこまで大きな問題ではないように感じます。

人口1人当たりの年間消費電力

このデータは、国民の生活にどのくらい電気が普及しているかという指標になるのではないでしょうか。やはりタイは整備が行き届いているためこの数値も高いくなっています。そのほか両国の数値はやはりまだまだ低いです。ただインドのほうが数値の高いという事実に意外さを感じる方もいるのではないでしょうか。

総発電量

インドがダントツで多い発電量となりました。国土や人口の関係もあり必然的に多くなっています。今後、配電設備や盗電への対策が整い、効率化されればさらに発電量も上がるのではないでしょうか。

最終消費、電力ロス

最終的にどれほどの電力が国民に行き渡り消費されているのかを示す2つのデータです。最終消費電力が総発電量に近い数値になるほど、つまり電力ロスの割合が少なければ少ないほど、送配電送のシステムが効率的ということになります。電力ロスの数値はどれだけ電力インフラの質の部分が整備されているかを示す数値になるということです。

そうするとインドの整備がまだまだであることが分かると思います。インドの総発電量は三か国の中でもトップの発電力ですが、質の部分はまだまだ非効率さが目立っています。ただタイの整備進行状況をみるとインドも今後5年でさらに整備が進む可能性があります。

 

以上がインドとASEAN両国の比較です。タイと整備状況に少し差がありました。しかしタイのインフラ整備は80年代から行われています。そのことを考えると整備が進んでいるのはある意味当然です。インドでは現在、電力整備に関して改革と投資が進んでいます。今後タイと同水準まで整備が進むのは時間の問題です。

一方、インドネシアと比較するとそこまでインドの整備が遅れているわけではないことがお分かり頂けたと思います。ASEANとの比較によってなんとなくインドの電力整備がどのくらい進んでいるのかが見えてきたと思います。これからインドの電力整備がより一層進むことを期待しましょう。

 

まとめ

安心してください、インドの電力整備はASEANに負けないほど進んでいますよ!

私自身、インドの電力整備が十分でないことはポジティブにとらえています。なぜならそれは、今後の経済成長の伸びしろがあるということだからです。

先ほど電力消費量と経済成長には相関関係があるということを紹介しましたが、1950年代の日本がまさにそうです。その時代、高度経済成長期だった日本は電力インフラが徐々に整備され、電化製品の新たな需要を生み出しました。その結果、三種の神器と呼ばれる製品が国民の生活に広く普及し、更なる経済成長を後押ししたのです。

インドは電力インフラ未整備率が61%ですからまだ半分近く整備が行き届いていないということです。ですがその整備が進み電気というインフラが国民の生活に普及していけば、今後電力消費量は間違いなく上昇します。それにより家電製品や照明器具の需要拡大を見込め、国民の購買行動をさらに活性化させることができます。それが経済成長を加速させる結果につながると考えます。つまり電力整備が行き届いていない今のインドは、50年代の日本のようにさらなる成長を遂げる可能性を秘めているということです!

私が伸びしろと表現したインドの可能性。どうですかワクワクしてきませんか?インドの最大の魅力はこの可能性です!これからのインドの成長に注目です!

インドとASEANインフラ比較シリーズⅣ~水編~

2017.10.07

インドとASEANインフラ比較シリーズⅢ ~電気編~

2017.09.28

インドとASEANインフラ比較シリーズⅡ ~鉄道編~

2017.09.24

参考サイト

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/7e86a725b4b62adf/20150019a.pdf

https://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_jigyo/india/detail/1231615_4776.html

https://www.jepic.or.jp/data/global12.html

 


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