【インド起業】インド14年目のライフスタイルショップオーナーが語る、異文化コミュニケーションの極意


「インドで働く人」インタビューシリーズ、インド起業編。今回は、YASU CRAFT AND HOSPITALITY PRIVATE LIMITEDの創設者、土井康弘(どい やすひろ)さんにお話をお伺いしました。

土井さんはなんと、インド生活14年目に突入!

インドの伝統工芸品に魅入られ、インドに足を踏み入れた土井さん。ヒンディー語留学からインドでの生活を開始し、2008年にYasu Craftを起業して以来、インド人と共に働き続けてきた土井さんは、異文化コミュニケーションのプロフェッショナル。

多文化、多言語、多宗教を持つインドと、単一文化、言語、宗教信仰が薄い日本の、双方異文化理解はそう簡単なものではありません。そんな国で、土井さんはどうやって事業を継続できたのか?異文化コミュニケーション力をどのように培ってきたのか?

インタビューを通して、土井さんが感じるインドの魅力や、まるで異なる文化を持つインド人との異文化コミュニケーションの極意をお伺いしました。

インドで起業するまでの道のり

Palette編集部
インドへ来られた経緯をお聞かせ下さい
大学卒業後、就職はせずにトルコのイスタンブールに滞在していました。伝統技術であるトルコ絨毯の歴史、紋様(もんよう)や目利きを学ぶためにカーペット屋で働いていました。当時は、路上で13歳の少年と一緒に呼び込みをして、お金をもらうわけでもなく、ただ目利きを学びたいという一心で毎日働いていました。

その後、日本に帰国し、大阪のギャラリーでアルバイトとして働き始めました。自分自身がイスタンブールで購入したカーペットを売ることもありました。

アルバイトから始めた業務ですが、その後、契約社員・正社員そして店長になり、結果的に7年近く働きました。在職中に、貿易実務の資格を取得。海外業務を拡大。海外からの仕入れ業務はもちろんですが実際に各国を飛び回る中でアンティーク家具、手工芸、手織物に興味を持つようになりました。

30歳になる5日前に会社を退職し、インドで起業する準備に入りました。
インドを選んだ理由は、「困難な市場こそチャンスがある」と思ったからです。というのも、海外からの仕入れをしていた時に、要求したものと全然違うものがくることが多かったのがインドでした。要求通りのものがくることほとんどなく困ったこともありました。だからこそ自分自身がそこに飛び込み、価値を生み出すチャンスがあるのではないかと考えました。

すでにある程度整っている市場に自分自身が入ることに興味もなかったため、ニッチなところで自営業をしたいと考えていたのも理由です。ニッチな市場だからこそ自分がそこで仕事をする意義であったり、やりがいがあると感じました。

また、インドの文化は州によって全く違うということに惹かれていたことも、インドで起業しようと考えたきっかけの一つです。文化の違いによって伝統工芸品にもたくさんの違いがあるためインド全土の伝統工芸品をこのお店に揃えられたらなとも考えました。

渡印最初から起業をしていたわけではありません。言葉が通じなければ仕事にはならないと思い、初めは学生ビザでヒンディー語を学ぶ留学生とインドに滞在していました。1年くらいの留学期間だったのですが、実際に通ったのは2ヶ月ほど。起業をするために、市場調査等の準備をするために時間を使ってしまったため学校に通った時間は少なかったです。

2度訪れた危機的なインド事業

Palette編集部
インド生活で困ったこと、ハプニング等はありましたか?
ハプニングというか、事業で困ったことが2つありました。

1つは、6年前のことですが、メインで仕入れをしていた業者さんが交通事故で皆さん亡くなってしまったことです。

そこの業者さんから以外ほとんど仕入れをしていなかったという状況だった当時。もちろん業者さんはお店をたたむことになったため、我が社も危機的状況になりました。オーダーメイドで家具作っていたのに仕入れ業者がほぼゼロになってしましました。仕入れ先がないのに、オーダーは入ってくる状態に陥り、ひたすら新たな業者を探し回りました。そういった経験を踏まえ、現在は、一つの業者に頼るのではなく、複数の業者さんと関係を作り、お客様に製品を安定供給できるような体制に整えました。

2つ目は、2年前にパニック障害になったことです。
「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」を三大症状とする病気です。パニック障害になった場合、発作が起きた場所に行くと手足が痺れたり力が入らなくなったりして、その場所に近づけなってしまします。私の場合、お店のデスクで発作が起きたため、お店に行くと発作が起きてしまうようになりました。1日に3〜4回ほど発作が起きるし、24時間自分が死ぬのではないかという不安に襲われていました。お店にいても電話がかかってきたらどうしよう、電話で話せるかなというような不安で呂律が回らなくなったこともありました。発作が起きると収まるのを待つしかありませんでした。2回ほどインド人スタッフに病院に運んでもらったこともありました。手の施しようはないと医者に言われていましたが、10日で治しました。ショック療法のように、やりたくないことをやるようにしました。人に会いたくなくても会いに行ったり、人が多いところに行きたくなくても人混みに行ったり。初日は5分、2日は30分というようにお店にいれる時間を延ばして行くよう努力しました。本当ならば2年かかる病気らしいです。対処法を独自で身につけたからこそ、今ここで働けているのだと思います。

次のステップは、日本でインド人向けのホテル事業?!

Yasu Craftの事業概要



Yasu Craftは、ハンドメイドで製造する家具や生活雑貨が、お客様の生活を豊かに。そして、生活スタイルをイメージできるようなライフスタイルショップを目指しています。

商品は自然な素材だけを使って製造するナチュラルな家具や雑貨を取り扱っております。ラミネーションのような科学製品を使った加工等は施しません。お客様の要望によっては、加工も承っていますが、基本的には「自然✕伝統工芸」がYasu Craftのブランドポリシーです。その他にもジュエリーなどの雑貨も取り扱っていて、こちらも全てハンドメイドです。

2〜3年ほど前から、特注で家具を作るサービスも始めました。
家具を日本で持って帰りたいと言ってくださる人もいるほどです。他の家具屋では基本的に1人のために1つを作るということができないので、そういった意味では差別化できているかなと思います。実際に日本人の方の90%以上は特注で家具を注文してくださいます。日本や海外からインドへきた駐在の方の他にホテルやインド国外の輸入業者様からもご注文いただくことがあります。

はじめた当初は、日本人とその他の国の方々のお客様の割合は8:2くらいでしたが、現在は5:5になってきています。日本人の方とインド人の方そしてフランス人の方も良く来られます。フランス人のお客様が多かった影響で一時期フランス語の勉強もしていました。

土井さんのビジョンと日本での新規事業プラン

インドには、ずっといようと思っています。ただ、いろんな国を訪問し、お客様を増やし、事業規模を大きくしていければと思っています。輸出先含めいろんな国のお客様を増やして行きたいと考えています。

また、今年、新たな日本での新規事業プランあります。日本の空き家を改装してインド人向けのホテルを作りたいなと考えています。そこにYasu Craftの家具や生活雑貨を設置し、Yasu Craftが提案するライフスタイルを表現できればなと思っています。

最近、自分の実家のある京都や四国など含め日本全体で人口が減っている理由で空き家がどんどん増えてきています。この新規事業プランを活用して地域創生に貢献できれば一石二鳥だと思いますし、自分自身がインドでも日本に一時帰国している間でもビジネスが継続できる土壌として初めておきたいなと考えています。

インド起業・インド就職を目指す方へ!異文化コミュニケーションの極意とは

私は海外で就職を考えた時に、まず考えたのは「言葉を学びたい」ということでした。言葉は一つのコミュニケーションツールであり、大切なことは話す相手の背景にある文化あるで考えながら言語を学んで来ました。

インドを嫌いになっていく人の多くの理由は、双方の不理解から来ると思っています。日本の常識を全て持ってきて、インド人とは合わないから嫌いだとか、汚いという理由でインドを嫌いという人がいます。人の国に来ているというリスペクトを持って生活するべきだと私は思っています。

言葉を学ぶことは、その国に対してのリスペクトを持っているという前提でもありますし、国をよく知る機会にもなると思います。例えば、家族の呼び名(親戚)が全て違うのがインド。母方の祖母、祖父、父型の祖母、祖父、ヒンディーでは全て異なります。これって、家族や親戚をリスペクトし、一人ひとりの存在を大切にしている文化の一つの現れでもあるんです。

言語習得は、コミュニケーションの手段としてはもちろん、文化を理解することにもつながります。海外で外国人という立場で働くためには文化を理解することはもちろん大事だと思います。だからこそ文化理解の一手段として現地の言語にもトライして欲しいです。また違ったインドの良さを見れる機会にもなるはずです。

海外起業を考えている方へ

起業するなら、一生インドでやり抜く気持ちで挑戦して欲しいです。2〜3年だけやってみようと考えているならあまりお勧めはしません。これまで知人でもそういうお話をされている方がいて、目の前で挫折を見ているからこそです。インドで2〜3年だけやってやろうという意気込みで起業しても、実際はそこまで全然続かないことが多いです。気持ちの持ちようだと思いますが、一生やるつもりで腰を据えてやらないと、インドでは事業は続かなくなってしまうと感じています。

良い時も悪い時ももちろんあるので、それも見据えた上で継続してやって行くことが大事です。

日本を離れて暮らすということは、家族や友人と離れて暮らすことになりますし、起業するとなかなか日本に帰れない環境にもなります。だからこそ、何かが起きても、自分は身動きが取りにくい場所にいることを理解した上で、海外起業に踏み込むことが大切だと思います。

Yasu Craft 店舗情報


ライフスタイルを提案する空間「Yasu Craft」

場所:Khasra, Shop No. 350, Sultanpur, (MG Road), New Delhi, INDIA, 110030
(Near Sultanpur Metro Station)
https://goo.gl/maps/8DTqB8YDiFs

TEL:+91-98997-15343

E-mail:yasucraft121@gmail.com

Webサイト:https://yasucraft.jimdo.com
Facebookページ:www.facebook.com/yasucraft

土井さんが経営共同する「MANGAFUL CAFÉ」の店舗情報

住所:Yasu Craftの10m奥

営業時間:11:00AM~20:00PM

Facebookページ:http://facebook.com/mangafulcafe

編集後記

2005年当時は、まだ少数日本人しか踏み入れてこなかったニッチで難しいインドという市場を敢えて選んだ土井さん。その後、インドは急速な変化を遂げ、日本人や外国人の流入が急速に増加したことで、外国人をメインターゲットとした商品の販売市場ではパイオニアとしてのポジションを獲得することができたのではないでしょうか。

その成功要因は、インドを知ろうとする異文化コミュニケーションの真髄を理解し続ける努力をしてきたからこそ。外国人にとっては特に厳しいインドでの事業を継続することができたのは、現地の言葉とその背景にある文化を理解する努力を怠ってこなかった土井さんの高い意識であると感じました。

インド生活14年目に入り、「うまくいかない時なんてたくさんあったけど、ギリギリのところでなんとかなってきた。それの繰り返しで今インド生活14年目になりました。インドにとどまる縁があるんだと今は感じています。」と振り返った土井さん。

現在も、そしてこれからもインドの地で活躍し続ける日本人オーナーのパワーを感じるそんなインタビューでした。