インドで不正って本当にあるの?インドビジネスの現場に迫る!

インドで働くからには、インドビジネスの基本的な情報は入手しておきたいですよね。その一つが、「不正」。不正なんで自分の会社では起きるはずがない!と思っているかもしれませんが、100%とは言い切れないのがインドです。

インドで働くことになれば、少なからずインド人部下を管理する立場になることは大です。クリーンで透明性のある組織を目指すのであれば、不正が起き得ない体制を作り上げていく管理者としての最低限の知識が必要です。

今回は、インドにて外資系コンサルティングファームにて活躍される野呂哲也氏に、Paletteを運営するJAC Recruitment Indiaがインドで出版する「人事ジャーナル」に寄稿いただきました不正に関する記事をシェアいたします。

従業員不正対応の比較 ~インド系、欧米系、日系~

当地に赴任して1年が経ったところですが、最も多く相談を受けた従業員不正への対応について書かせていただきます。
プロティビティは米国系のコンサルファームですので、日系以外の企業の不正対応も数多く支援しています。本稿では、弊職の経験とグルガオン事務所のフォレンジック専門家からヒアリングをした内容を共有します。

まずは、欧米系の不正対応についてですが、彼らのやり方は日系と根本的に異なるわけではありませんが、力点の置き方に若干の差異があります。
    • 経営者のメッセージ

    • 内部統制の整備

    • モニタリング違反者への対応

上記の4つは、日系企業でも通常行われているかと思いますが、力点の置き方で外資系と大きく異なるのは3つ目のモニタリングです(因みに、日系企業の力点は2つ目の“内部統制の整備“に置かれています)。欧米系企業が内部監査などのモニタリングに投資する資源は日系と比べてかなり多いです。通常の内部監査に投入する資源(時間、人員、技術)もそうですが、時には通常監査とは別に不正監査を実施して、従業員への“牽制”としています。

これには、①経営層と従業員の比較的ドライな関係、②ローカル従業員への積極的な権限移譲など、組織の風土や文化も大きく影響しているのかもしれません。特に②については、外資系企業のローカル従業員への権限移譲はかなり進んでおり、それによってスピーディな意思決定や、規制や市場などの環境変化への対応、適切な市場理解などを目指しています。一方で権限を移譲すること自体リスクでもありますので、しっかりモニタリングにも時間を使うという具合です。アクセルとブレーキをうまくバランスさせていると思います。

そしてモニタリングに多くの時間を割くことで、従業員側から見られているという心理が内面化され牽制効果が生まれるので、不正防止という観点から効率的と考えられます。内部統制という“仕組み”ではなく、心理的な“仕掛け”で不正を思いとどまらせるというわけです。

ところで、時々日系企業の業務プロセスにおいて、現場の日常的内部統制(チェック、承認、職務分離など)に依存しすぎてプロセスが冗長になっているケースがあります。例えば、少額の購買申請に承認サインが10以上もあったり、金額の多寡にかかわらず最終承認は社長であるケースなどです。もし内部統制のレベルを下げずに冗長性を排除したいなら、現場の日常的統制を軽くした上で、データ分析などの定期的なモニタリングを導入することをお奨めします。最近はRPAなどのデジタル技術を利用した効率的モニタリング手法も開発されています。

次に、インド企業は従業員不正にどのように対応しているでしょうか?不正の手口やローカル従業員の思考回路を熟知したインド企業の経営層の対応は、我々日系企業にとってどれくらい参考になるでしょうか?

結論を先に言うと、あまり“真似をしないほうがいい”と思います。

上記の4フェーズで言うと、インド企業は真ん中の2つ、つまり“内部統制の整備”と“モニタリング”が非常に軽いです。理由は2つあります。1つ目は、単純にお金がかかるからです。内部統制の整備・運用は常に効率性とのトレードオフにあるといっても過言ではないでしょう。厳格な職務分離を実現したり、承認ステップを強化すれば、多くの場合組織やプロセスが冗長となります。2つ目の理由は、(特に新興国では)内部統制を構築しても社内や外部(サプライヤなど)との癒着によって乗り越えられます。

逆に、インド企業が日系や欧米系よりも重視しているのが、一つ目の“経営者のメッセージ”と最後の“違反者への対応”です。

経営者にもよりますが、明確なメッセージを従業員に送るのはインド経営者の特徴です。不正についても同様です。ただ、これは社員との信頼関係を重視する多くの日系企業の社風には合わないかもしれません。

次に違反者への対応ですが、こちらも積極的に行います。日系企業の場合100%の証拠がない限りクビにはせず配置転換等で穏便に済ませる会社が多いですが、インド系の場合、グレーゾーンでも決断し、その結果は公開します。それがなによりの“牽制”になるからです。

ただ、処分を受けた従業員からすると不公平感が残ります。何故ならモニタリングを重視していないので、たまたまばれずにうまくやりぬけた従業員もいるからです。しかし、公平性の確保は日本人が重視しすぎなのかもしれない、とも思います。

私で“真似をしないようがいい”と述べたのは、従業員の処分はそれほど甘くないからです。従業員が労働組合の有力者である場合など、下手をしたら最悪の場合ストライキなどに発展しかねません。インド企業は周到に人間関係を調査したり、協力者を取り込んだりできますが、外国人にはハードルが高いでしょう。

【結論】インドで起こる不正に対する対応策

現場の日常的内部統制を軽くしたうえで、データ分析などを活用した定期的なモニタリングを導入し、看過できない案件については調査を行い従業員への牽制とする。

野呂哲也氏のプロフィール

プロティビティ インディア
アソシエイトディレクター
自動車メーカーでの勤務を経て2008年にプロティビティシンガポール事務所に入所。以来一貫して日系企業の海外展開を支援。東京、上海での勤務を経てグルガオン事務所にて勤務。インド赴任後1年経過。専門領域は、業務改革、内部監査、内部統制及び不正防止/調査。