日本にも熱烈なファンが増えてきたボリウッド映画。劇中で描かれる大規模な結婚式のシーンに魅了された方も多いのではないでしょうか。家族や親戚はもちろんのこと、友達の友達の友達…と数珠つなぎで参加者が増えて行くと言われているインドの結婚式。朝から晩まで何日もパーティーを開催すると言われているインドの結婚式市場は、近年世界が注目するほどの急成長を遂げています。
ここでは、2022年7月に結婚した新婚のIndu(インドゥー)氏のコメントとともに、ヒンドゥー教徒の結婚式前の準備から当日の流れまでをご紹介します。日本の結婚式が縮小ムードを迎える中、その逆を進むインドの結婚式市場に迫りました!
世界が注目するインド結婚式の平均予算は?
インドの結婚式ハイシーズンは、11月から2月まで。一年を通して温暖な気候のインドですが、この時期の平均気温は20度前後で、比較的過ごしやすい気候です。この時期は、街のあちらこちらで深夜まで結婚式の音楽が鳴り止まず、参加せずとも結婚式の雰囲気を感じることができます。インド貿易連合(CAIT)の調査によると、2022年11月4日から12月14日の間にインド全土で開催された結婚式の総数は320万件と言われています。2018年の日本の年間挙式数はおよそ15万件でした。インドの平均年齢は2023年時点で28.4歳なので、インドの結婚式市場の勢いはしばらく続きそうです。
また、インドの中間層の平均結婚式予算は15Lakh ~25Lakh ルピー前後(およそ240万円~400万円)と言われています。日本の平均予算300万円とほとんど変わりません。一方、日本の20代から30代の平均年収が400万円前後であるのに対し、インドの中間層の年間平均所得は2Lakh~5Lakhルピー(およそ30万円~80万円)です。金額だけで比較すれば、一世一代のイベントにかける想いはインドの方が強いかも知れません。
一方で、所得格差が大きいインド。高所得層の結婚式の予算は青天井です。筆者の友人の結婚式では、3拠点開催で予算が約3000万円といった話しもありました。また、2018年には、世界長者番付にランクインしたこともあるインドの実業家ムケシュ・アンバニの娘の結婚式のプレパーティでビヨンセがパフォーマンスを披露し、世界中から注目を集めました。インドの方々の結婚式に対する本気度には目を見張るものがあります。
インド人にとって結婚式とは?
インドの人々は、結婚制度をとても大切にしています。一説によれば、ヒンドゥー教徒にとっての結婚式は天国を意味するものだといいます。一度結婚するとその絆は7世代続くとされており、結婚を機に人生の第二段階である「ガルハスチヤシュラム」に入ると信じられています。特に、ヒンドゥー教徒の男性にとっては、結婚は重要な義務のひとつと考えられており、結婚をすることが先祖への恩返しになるようです。だからこそ、インドの多くの人々は一生の思い出になるような盛大な結婚式を挙げたいと考えています。自分の家族や生まれた地域の文化、周りの人々とのつながりを再確認するための大切な時間のようです。
インドの花嫁に聞いた!結婚式のリアル
一般的に、家族だけで行う儀式を2日間行ったあと、3日目に友人や親戚を招いた盛大なパーティを開催するのがインドの伝統的な結婚式のスケジュールです。近年都会に住むインド人の中には、1日だけ盛大なパーティを催すカップルも増えてきているとのこと。徐々に忙しいインド人の中でトレンドの変化が起こっているようです。ここからは2022年の7月6日から9日の4日間にわたる結婚式を挙げた、Indu(インドゥー)氏のインタビューをご紹介します。結婚式準備に役に立ったオンラインサービスや、複雑な儀式の数々についてお話しいただきました!
※結婚式で行う儀式や日数はカップルによって異なります。
Indu(インドゥー)氏について
日本語・英語講師。日本では2年間英語講師として小中学校で働いた経験を持ち、現在はインドでインド人向けにオンライン日本語教室を開講。フォロワー約2万人のインスタグラムアカウントを運営し、日本とインド、両国の文化について多くの人々に興味を持ってもらえるよう、精力的に活動している。※Indu氏のInstagram アカウントはこちら
インドの結婚式1日目 | ターメリックとヘナの儀式
結婚式開催の半年前から、会場決めや会場デコレーションアーティスト探し、メイクアップアーティスト探しなどを始めました。活況を迎えたインドの結婚式市場で活用されているのがオンラインワンストップサービス。WedMeGoodはインドで人気の結婚式サポートサービスを展開しており、私もこのプラットフォームを利用し、メイクアップアーティストを見つけました。結婚式はじめの儀式は「ハルディ」と呼ばれるもので、家族や親戚が花嫁の顔と体にターメリックペーストを塗ります。インドの風習では、ターメリックの鮮やかな黄色は幸運の色と言われており、新しい人生を共に歩む二人の門出を祝うための儀式です。
そして、「ヘナ(メヘンディ)」の儀式では、ヘナアーティストが手足に模様を描きます。ヘナは、幸運・喜び・美をもたらすと考えられており、幸せな結婚を祝うという想いが込められています。
インドの結婚式2日目 | サンゲート・パーティで踊り狂う!
2日目は、新郎新婦と両家の親戚や家族が各々の好きな歌や踊りを披露する、「サンゲート・パーティ」です。「サンゲート」は音楽を意味します。二つの家族の垣根を取り払い、これから一つの家族として生きていく絆を祝う儀式です。両家の経済状況によって、このパーティの規模は変わってきます。結婚式のゲスト全員が入れるようにホテルの大きな部屋で行われることもあれば、花嫁の家でこじんまりと行われることもあります。
インドの結婚式3日目 | 夜中の3時まで続く儀式
結婚式の山場を迎えた3日目は、重要な儀式が盛りだくさんでした。午後3時頃から準備を始め、撮影などを含めて4時間ほどかかりました。この日は特にメイクアップや衣装などにこだわります。新郎は、結婚式当日は家族と一緒に馬に乗って結婚式場に登場します。これは、バラートと呼ばれる儀式で、宗教的な意味合いはなく、一説では結婚のために町から町へと移動するときに生まれたものと言われています。
会場に着くと、バラの花輪「マラー」を交換します。この時に来ている衣装は15キロほどありました。
花輪の交換が終わると、「バヴァーレ」と呼ばれる火の儀式があります。家族の存続と繁栄をを祈願します。そして、結婚式のフィナーレでは、髪の生え際に既婚の証である赤い粉をつけるシンドゥールの儀式を行います。この儀式は特に時間がかかるのが特徴で、新郎新婦とその親戚は一晩中起きていることもあります。幸いなことに、私たちは夜中の3時には終わっていたので、少しだけ睡眠時間がとれました笑
インドの結婚式4日目 | 家族と涙のお別れ
家族や親戚、多くの友人に祝ってもらった結婚式の山場を終え、最終日は「ヴィダイ」と呼ばれる儀式を執り行います。ヴィダイは、ヒンディー語で「さようなら」を意味します。この日は自分と自分の家族は皆大泣きをしてしまい、とても感傷的な気分になりました。それから約7時間かけて夫の家に着くと、とても温かく盛大に歓迎してくださり、新しい家族の一員になることをひしひしと感じました。家の中もとても素敵に飾り付けしてくれており、喜びと幸せでいっぱいになり、その日はまるで夢のようでした。
まとめ
世界的に注目を集めるインドの結婚式事情。日本とは異なる宗教や文化の違いから、私たちには想像できないほど大規模で盛大な結婚式が開催されています。伝統的な儀式を大切にする煌びやかなインドの結婚式では、この国の文化や思想がたくさん詰まっています。インド結婚式シーズンに合わせて、インド渡航を計画されるのも面白いかもしれませんね。これからどんどん進化するであろうインドの結婚式市場、引き続きウォッチしていきます!
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