「インドで働く人」インタビューシリーズ。今回は、ヘアサロンTOKUMI-HAIRの創業者であり、インドで初の日本人美容師として活躍されている徳見 勇郎(とくみ いさお)さんにお話をお伺いしました。
2013年にインドという地に足を踏み入れて以来、「安心と癒しの空間・時間」を提供することをモットーに、主にインド在住日本人向けにサービスを提供し続けている徳見さん。
ここでは、徳見さんのインド起業までの経緯と、お客様へ届けたいメッセージをまとめました。
インドでヘアサロンを起業するまでの道のり
インドへ来られた経緯をお聞かせ下さい。
同社の当初の計画では、半年周期で日本人スタッフを入れ替え派遣し、インドでの刺激ある経験を得るというコンセプトで立てられた企画でした。当時は、インドについて何も知らなかったため、とりあえず3ヶ月のトライアル期間として働くという契約でインドへ赴任しました。
ところが、オープン前日にまさかのプロジェクト中止のお知らせ。なんともインドらしいです。そんなこんなで、3ヶ月の予定が白紙となり、働く先がなくなったため、インドで訪問型の出張美容師をすることになりました。それが、インドでの美容師生活の始まりでした。
印象的なインド生活の幕開けですね。そこからどういう展開で起業に至ったのでしょうか?
しかし、初めて海外、しかもインドで、しかも出張美容師で、お客様と接点を持つ中で、施術はサロンでするものだと痛感しました。小さいお子様がいる方など、家から出にくいという方からは喜んでいただけましたが、同時に、不便も多く、サービスクオリティに対する自分への不満も積み重なっていきました。
例えば、お客様ご自身に施術イスや鏡をご準備いただく必要がありましたし、インドの自宅のライトは暗いことが多かったため、最大限のサービスを提供することがなかなか出来ない環境でした。こういったフラストレーションが積み重なり、自分が最大限のサービスを提供できるサロンという環境で、お客様にサービスを提供したいと考えるようになりました。
当時勤めていた会社に、インド支店設立の話を提案しましたが、元あった企画も含めて予定してないという返答でした。それなら、自分でサロンを開いてしまえ!と一心発起し、会社を退職し、インドで自分のヘアサロンを開くことを決意しました。インドのヘアサロンで美容師として働く予定が、直前で白紙になったことの悔しさも後押しし、起業への原動力となったのだと思います。
インドでのハプニングは日常茶飯事!でも「美容師になってよかった」を再実感できる環境
インド生活で困ったこと、ハプニング等はありましたか?
中でも、入院したことは何よりも大きなハプニングかもしれません。結石になって手術したのは衝撃でした。まだ我慢できる、できると、一晩中苦しみに耐えた後、早朝に職場のインド人に連絡をして病院に駆け込みました。日本にいても、病院に行ったり入院したりするのは誰でも不安になると思います。それがましてや、インドでしたので。体調管理に配慮することはもちろんですが、次からは手術をせずに回復する方法を選びたいと思いました。
インドで働くことのメリットはなんでしょうか?
また、インドでは「美容師になってよかった」と再実感する機会が増えましたね。インドだからかもしれませんが、日本にいるとき以上にお客様に感謝されることが多いように感じます。
日本にいる頃から、プロの技術というのは「手に職をつけ、自分のはさみ一本でどこでも飯を食えるもの」だという考えがありました。インドで起業をし、自分のはさみ一本でここまで続けられているのは、この考えを証明できたことも嬉しいですね。また、インドへ来た当初は、知り合いもインドに関する知識もゼロの状態でした。そこから、お店を開きお客様に通っていただける場所をつくりあげてきたことで、やりがいを日々実感してきました。
こういった日本ではなかなか得れないたくさんの実感を通して、自分自身の存在価値を強く感じれている事が2つ目のメリットです。
「インド人にプロの技を継承したい」次世代への技術伝授が次のステップ
徳見さんご自身の今後のビジョンをお聞かせ下さい。
日本で日本人に技術を教えるようにはいきません。日本とインドの文化の違いが弊害となり、教えることの難しさを感じます。しかし、インド北東州の人たちは日本人に近いサービスが提供できますし、仕事もできると感じています。
北東州は、インド本土から少し離れたい地にあり、中国、ブータン、バングラディッシュに囲まれています。主に、東アジア系の顔立ちをした方が多い地域です。東アジアに近いからかもしれませんが、日本に近いおもてなしの心や文化があると感じています。そのため、今後のTOKUMI-HAIRの事業拡大には、インド北東州の人たちの力が必要であると考えています。
1つだけ北東州に美容学校があるのですが、そこに出向いて無料で講習をしたいなとも考えています。その学校で定期的に講習をする事で、人材の流れも見込めるのではとも考えており、デリーに上京した際には、自分のお店を訪ねてもらうのはもちろん、働き口も提供できるかも知れませんし、後継者となる人材に出会えるかも知れないと期待しています。インドで優秀な人材を育てあげ、日本の美容サービスを伝えて行く事ができれば、さらに店舗を増やしたり、店舗責任者をインド人に任せたりと事業拡大の可能性が広がって行くのだと思います。
徳見さんがインド在住のお客様に伝えたい想いをお聞かせ下さい。
また、TOKUMI-HAIRでは、日本語でのコミュニケーションを通して、日本のヘアサロンにいるような安心と癒しの空間をご提供したいと考えています。心地良い環境で心地良い人に心地良いサービスをしてもらうことがお客様に満足いただける条件だと考えています。それは、日系だからこそできるサービスだと思っています。
お客様一人ひとりのご要望をリラックスできる環境でお伺いし、安全で安心な設備の中で、ご満足いただけるヘアスタイルの提供ができればと思っています。
インド就職・海外就職を考えている方に一言お願いします!
海外旅行と海外生活と別のものであり、日本で働く事と海外で働く事も別物です。それらの体験をできる事は自分自身の成長につながると思います。ただ、海外就職を考えたときに多くの人が気になるのは、語学だと思います。でも、実際働いてみると語学力は大きな問題ではないことを知りました。語学力はとても大切ですが、できないからといって日本を出れないといったことはないと思います。
語学ができないことで困ることはもちろんあります。ただ、それを足かせに日本から出たいのに出ないという考えに至ったり、海外就職を諦めるようなことはしないで欲しいんです。語学は生活しながらでも学べますし、海外にいる人がみんな完璧に英語が話せるわけではありません。私自身も英語ができたわけではありません。
挑戦したいと少しでも思い、少しでも興味がある方!語学ができないからという理由で足を止めず、一歩進んでみてください!
海外に挑戦したいと考えている美容師諸君へ
海外で働くと自分の価値観、人生の価値観が変わります。私自身の考えですが、日本人を満足させることが世界で一番難しいと思っています。日本人の髪質や骨格、求めるサービスのレベルが高いという条件がある中で、海外に住む日本人に満足してもらえるサービスを提供することができていれば、世界基準の技術力を持っているといっても過言ではないと思います。語学の壁も越える技術になり得ます。それが、ハサミ一つで生きていける、プロの技術力ということでしょう。
TOKUMI-HAIRのサービス内容
「安心」と「癒しの時間」と「小さな喜び」を提供し続けていたいという思いで、インド全土初の日本人美容師による美容室開業を果たした、徳見さん。現在は、デリーとグルガオンの2店舗のお店を構え待っています。お店の所在地やサービス内容などを下記、ご紹介します。デリー店
【住所】
https://goo.gl/maps/MoLHZXYiSy52
B6/9 2nd floor Commercial Complex Safdarjung Enclave New Delhi
(デリーYAMATOYAさんの3階。店内の階段をご利用ください。)
【営業時間】
9:00〜19:30
※定休日なし
※月曜日-徳見さん/火〜日-川平店長
グルガオン店
【住所】
https://goo.gl/maps/d7TjQzaAKqk
A14/6 DLF CITY Phase 1 Gurgaon Haryana
【営業時間】
9:00〜19:30
※月曜日定休日
◎連絡先
+91 8447947612 / +91 8447075466
cime.hair@gmail.com
※両店共通です。
◎サービス内容詳細
TOKUMI-HAIRのホームページ
→http://www.tokumi.in
徳見さんご自身のブログ
→https://ameblo.jp/cime-hair/
編集後記
2013年にパイオニアとしてインド発の日本人美容師による美容室開業を果たしてから、はや5年。インドという環境の中で「安心と癒しの空間・時間」をご提供するべく、お客様一人ひとりによりそって施術されることを意識しているそうです。サロンにいる時間だけでも、まるで日本のような空間、安心という時間を目指しているとお話いただきました。そして、語学が全てではないこと。世界でも戦える徳見さんの美容師としての技術力と、ユーモア溢れる人柄に魅了された、そんなインタビューでした。