会計のプロが語る!インドの税法 GSTの制定に伴い一部企業に義務化されたGST監査とは

皆さん、インドの税法GSTって耳にされたことはありますでしょうか?日本とは異なるその税法の仕組みや監査体制。

インドでビジネスをするなら知っておきたい基本的なGSTおよびGST監査に関する情報を、現地会計コンサルティングCCIでご活躍される公認会計士の野口氏にコラムを書いていただきました。

寄稿いただきました下記コラムは、Paletteを運営するJAC Recruitment Indiaがインドで発行する「インド人事ジャーナル」2018月10月発行分より転載したものです。

はじめに

2017年7月1日より、インドで従前のVATやサービス税に代わり、物品・サービス税(以下、GST)が導入されました。インド政府は、2018年9月13日付の通達において、GST監査報告書(Form GSTR-9C)のフォーマットが発表されました。当該GST監査報告書の提出は当期(2018年度)が初年度であり、一定のインド企業で新たに対応が必要となります。今回はそのGST監査について説明します。

インドの税法 GSTとは?基本をおさらい

GST監査の説明の前にGSTの概念についておさらいします。GSTとは、従来の州ごとに設定されていた煩雑な間接税体系を簡素化や適切な税収の回収を目的としてする為に、一定の課税区分において、中央政府と州政府の双方が徴税を行う間接税の仕組みです。従来の間接税体系とは異なる重要なポイントは、「供給」の概念が導入されたことです。

すなわち、特定の物品及びサービスの取引にかかる当該事業者間の関係性(第三者か同一法人内か)並びに物品及びサービスが提供された場所、つまり「供給者」並びに「供給地」によってGST課税対象の取引及び納めるべきGSTが特定されます。

この「供給者」並びに「供給地」により、GST判定がなされる取引は、同一州内の取引、異なる州間の取引、インド国外からの輸入取引の3種類に分類され、それに伴い、中央政府が管轄するCGST(Central GST)、州政府が管轄するSGST(State GST)、これら2種類を統合するIGST(Integrated GST)、デリー首都圏をはじめとする連邦直轄領管轄のUTGST(Union Territory GST)にGSTも分類されます。

また、GST登録事業者は、ITインフラネットワークであるGSTNにおいて、定められた書式、期日において、申告、納税を行う義務があります。

GST監査とは?対象企業や手続きの詳細

次にGST監査について説明します。

GST監査とは

GST監査とは、GST監査人がGSTに関して「適切な法令遵守がなされているか」、「仮受GST(Output tax)の正確性」、「仕入税額控除(Input Tax Credit)の正確性」等の観点から、GSTの正確性と真実性について意見を表明するものです。

GST監査の対象

GST監査は会計年度で2,000万ルピー以上の売上を計上したGST登録事業者が対象となります。監査対象期間は、導入時の2017年7月1日~2018年3月31日までの取引となります。対象となる事業体の範囲は、株式会社に限らず、支店やプロジェクトオフィス等の事業体も含まれます。

判定する際の“会計年度”の期間については、正式な定義は今のところ定められていませんが、当局のガイダンスによれば、2017年4月1日~2018年3月31日にとなっています。GST監査では、登録ごとに実施が求められます。

すなわち、法定監査では、企業の財務諸表に対して監査を行う為、監査対象は各企業1つとなりますが、GST監査では、例えば、デリー州とハリヤナ州でGSTの登録がある場合、双方のGSTについて、監査対象(Form GSTR-9Cの作成)となります。

 GST監査人

GST監査は、勅許会計士又は原価会計士により実施が求められます。法定監査人とGST監査人の兼任に制限はないため、勅許会計士が同一の会社で、法定監査とGST監査を実施することは実務上可能となります。

GST監査報告書の構成

Form GSTR-9(GST監査報告書)は、PartA(Reconciliation)とPartB(Certification)の二つのパートで構成されています。PartAは、提出済みGST申告書類にかかる修正報告であり、企業名やGST番号等の基本情報、提出済みの財務諸表に記載された売上高、納税額、仕入税額控除(Input Tax Credit)等について、修正事項がある場合に記入します。

Part Bは監査内容に対する監査人の証明書となっており、PartAを作成するGST監査人が、法定監査人と同一の場合と、同一でない場合で記入項目が異なります。

 GST監査と法定監査の主な相違点

法定監査とGST監査では、各々の監査目的がなります。法定監査は、企業の財務諸表について『真実かつ公正』であるかについて証明することに対し、GST監査では、GSTの申告額及び法令遵守等の状況について、『真実かつ正確』であるかについて証明することになります。

法定監査では、公正性について、監査を行う為、監査を行う際に、すべての書類を検討せず、重要性を考慮して証憑を閲覧し、財務諸表に対して意見を表明します。

一方で、GST監査では、GSTの金額や関連する法令遵守に係る正確性について、監査を実施するため、関連する証憑(帳簿、E-way billや請求書等)やコンプライアンス遵守の状況(各種申告書提出、適切なGST登録の有無等)のすべてについて監査人が資料を入手及び閲覧し、その正確性について意見を表明することとなります。

おわりに

GST監査報告書の提出が遅れた場合は、GST法に基づき、200ルピー/日のペナルティが企業に科せられます。この提出遅延のペナルティもGSTの登録ベースで課せられるため、多数の登録がある場合、影響が大きいと考えられます。

また、前述の通り、GST監査は当期が初年度となり、監査済み財務諸表、請求書並びに申告書等、多くの関連書類提出が監査人へ提供される必要があるため、GST監査報告書の提出までに一定の工数が生じると推察されます。提出期限までにGST監査報告書を提出するために、早めに対応されることを強く推奨します。

 

プロフィール

野口 覚司(のぐち さとし)

大手監査法人にて、金商法監査及びIPO支援に従事後、2016年10月よりSCSグループに参画し、海外親会社からのリファーラル監査等の保証業務及び税務・会計に関するアドバイザリー、決算早期化支援等のコンサルティング業務に従事。2018年7月より、ジャパンデスク統括として、CCIへ参画。
日系企業に対する会計・税務・法務・労務関連のアドバイザリー業務を提供している。
公認会計士(日本)