インド現地採用から、グローバル企業の駐在員へキャリアアップ

インド転職 インタビュー

今回は、コロナ禍という不安要素も多い中、インド駐在員として2021年8月に南部の都市チェンナイに赴任してきた女性、奥村智美さんにお話を伺いました。

奥村さんは、2016年にインド・チェンナイで現地採用を経験され、帰国後には株式会社フジタという建設会社に転職してキャリアアップを果たされました。そして2021年、今度は駐在員として子会社(Fujita Engineering India Pvt. Ltd.)へ出向し、再びチェンナイに戻って働かれています。

本記事では、彼女がどのような経緯を経て海外駐在員になるまでのキャリアを築いてきたのかを、詳しく伺いました。

 

Palette編集部
はじめてインドを訪問したのはいつですか?


ー国際情勢への興味ゼロ、転機となったインドへのボランティアプログラム

大学2年生のときでした。私は様々な分野の学問が学べる総合的な学部に在籍していて、2年生の専攻選択では教育、心理、国際協力などから選べたんです。

周りの友達の中には、はじめから国際協力を学びたくて入学し、国連で働きたいといった目標を持った人も多くいました。一方私は、国際情勢についての知識も興味もなくて、そういう自分が人としてダメなのかなと思い始めていました。だから一度、実際に国際協力の現場に関わってみようと思ったんです。

そんな時、大学生向けの国際ボランティアプログラムを提供しているNPO法人を見つけて、台湾とインドのプログラムに参加しました。インドを訪問した最初の2週間、コルカタから電車で30〜40分ほど離れた村にある、学校に通えない子ども達のための教育施設で、子ども達と交流したり英語や算数を教えたりしました。

その後はコルカタに戻り、マザーテレサの「死を待つ人の家」で1週間ボランティア活動をしました。私は中高がカトリック系の学校だったので、マザー・テレサにとても興味があったのも、このプログラムを選んだ理由です。

 

Palette編集部
インドでのボランティア活動を経て、得たものは?


ー“ボランティア”の在り方、身近な助けの大切さに気づく

国際協力も必要だけど、自分の身近なところで出来ることをするのもとても大事だと感じました。

「死を待つ人の家」の運営も、村の子ども達の教育のお手伝いも、わざわざ外国人が遠くから来てするのではなく、本当は身近なインド人ができれば一番無駄がないなと思ったんです。

この経験から、帰国後は日本の身近なコミュニティでなにかできることをしたいと思うようになりました。国際協力である必要はないなと。そこで、近くの学童コミュニティで子ども達の学外活動をお手伝いするボランティアを始めました。

その後、オーストラリアでの1年間の交換留学を経て、最終的に国際協力ではなく、教育を専攻することに決めました。

 

Palette編集部
大学卒業後の就職から、インドへ渡るまでの経緯を教えてください。


ースリランカに就職したいのに、なかなかみつからない求人

大学卒業後は、新卒で造船会社に就職しました。スリランカに子会社を持っている会社だったので、実際に(出張で現地へ)行かせてもらう機会がありました。そこでは、期限に対する感覚が日本とまるで違ったり、作業している人より作業をしている人を囲んで見ているだけの人が多かったり、現場の中に小さなスラムのような場所があったりと、文化の違いに衝撃と刺激を受けました。こんなに違う環境で働くのは毎日面白いだろうと、海外、中でもスリランカで働くことにに興味を持つようになりました。でも、スリランカの求人がなかなか見つからなくて。

そこで、学生時代にボランティアで行ったインドも対象国として探し始めたら、インド南部のタミルナド州チェンナイにある、日系自動車パーツメーカーで現地採用が決まりました。当時は現地採用と駐在員の働き方の違いもよく分かっていませんでした。

その日系自動車パーツメーカーには当時、日本人駐在員が3人いて、私の仕事内容は翻訳、通訳、総務でした。社長や営業の方についてお客様とのミーティングに参加することもありました。

 

Palette編集部
はじめてのインド就職で、どんなことに苦労しましたか?


ーオーストラリア英語からインド英語への移行期間

まずは、インド英語の発音がまったく聞き取れなかったことです。インド英語の発音に矯正されていくことに抵抗感もありました。でも、だんだんと私の英語がインド人にも通じるようになっていったので、結局は少しずつインド英語に寄っていったんだと思います。

 

Palette編集部
インド人と仕事をする上での苦労はありますか?


ー日本とは異なる組織の在り方、人間関係にも表れるはっきりとした縦社会

基本的にインドは縦社会なので、自分にとって上の立場の人の言うことは聞くけれど、下の立場の人の言うことは聞かない傾向にあると現地採用当時感じました。ナショナルスタッフたちは、日本人駐在員のことは上司としてリスペクトしていましたが、現地採用の私のことは少し下に見ているところがあって、仕事をしにくいと感じることが多々ありました。

また、私は駐在員の指示をナショナルスタッフに伝えるという仕事も多かったので、両者の間に立ってコミュニケーションを取ることはとても難しかったです。

このほかだと、言い訳を聞かされることが多いとも感じています。

はじめのころは親身になって話を聞いてあげて、駐在の方に掛け合うなどもしていたんですが、さすがに途中からは言い訳だということが分かり、私も目を釣り上げて厳しく言わざるを得なくなりました。怒って言うことをきかせなければいけないというのは、自分の性格には合わないので、ちょっと辛いなとも思っていましたね。

ただ、インド人はそのように厳しく言う方も言われる方も慣れていると感じていて、あまり気にしていない様子なんですよね。自分の心は多少荒れましたが、それはインドで生きていくためには必要なスキルだと思いますし、そういう環境において自分の意見をしっかり主張できるようになったという意味では成長したかなと思っています。

インド 転職

Palette編集部
2年目の契約途中で帰国されていますが、何がきっかけだったのでしょうか?


ーもっと色んな国で働きたい、駐在員へのキャリアアップ

駐在員になりたいと思ったことです。インドで働き続けるか迷いましたが、就職して駐在員になって、もっと色んな国で仕事をしてみたいと思ったんです。

このように考えるようになったのは、インドで働けたからです。インドって、独特の文化が本当に面白くて、毎日おどろきに出会える国だと思っています。だから、別の国に行ったら、また別の面白い発見があるんじゃないかと感じたんです。

帰国後、現職である株式会社フジタに正社員として就職しました。はじめはミャンマー駐在員になったのですが、コロナの影響で一時帰国。在宅勤務をつづけていたのですが、その間にクーデターがおきてプロジェクトも影響を受けてしまい、2021年8月からインドへ異動となりました。勤務地は現地採用時代と同じチェンナイです。

 

Palette編集部
現地採用と駐在員、2通りの立場を経験されていますが、どんな違いを感じていますか?


ー会社への関わり方。全体を俯瞰して働くことの面白さ

会社全体を見て仕事をするようになったことが大きな違いですね。

現地採用のときは、日本人駐在員とナショナルスタッフの間に入ってうまく取り持つことが私の役割だったので、会社のそれぞれの事業がどうなっているのか、売上はどうなっているのかといったことまで把握していませんでした。

でも今は、会社全体を俯瞰しながら働けることに面白さを感じています。どのプロジェクトが取れたのか、そのプロジェクトにはどういう手続きが必要なのか。どこにどんな人が必要なのか、工事は順調に進んでいるのか。工事についてはどう改善していけばいいのか。

そういったことを考えて仕事しなければいけない。もちろん、まだ把握できていませんし、一人で回せるわけでもありませんが、会社のことに深く関わる立場になれたのは本当によかったと思っています。

今は前任者の方が出張ベースで来てくれていますが、いずれは全て自分でまわしていけるようになりたいですね。

 

Palette編集部
その他にやりがいを感じていることはありますか?


ーリアルな世界を論理的視点をもって落とし込むプロセス

私が一番面白さを感じているのは、契約書の作成プロセスです。

契約書って、すごく筋が通っていて文章がきれいだなって思うんです。変更箇所があったときも、きちんと筋を通して文章に落とし込んでいくんですが、机上の空論ではなく実際の現場の経験に基づいて内容を変更していきます。ここに、弁護士さんの論理的視点と実際の現場を良く知っている責任者の方の見解が反映されていくことになります。

そういう現場というリアルな世界と、契約書という紙の上の世界をいかに一致させるか。まだ自分ではなにもできませんが、現場での経験を契約書に落とし込む作業に関わって目の前で見ることができるのも面白いですし、何よりも、私は論理的な文章ってとてもきれいだなって思うんです。

日系企業とインド系企業との契約においては、契約書のフォーマットやそこに入れる文言など、見解の違いがみられることが多々あります。インドの商習慣では成立するのかもしれないけれど、日本の商習慣から見ると契約書として成立していないということがあることが分かってきました。必要なことが抜けていたり、逆に不要なことが入っていたり。

ただ、全て日本のやり方で通すわけにもいかないので、法律的に問題なく、かつインド人が見ても納得できる文章を考える。

とはいえ、インドでは、契約が決まった後からでもネゴしてくることが多々あったという話もきいています。

 

Palette編集部
インドでの生活を通して何か変化はありましたか?


ー許容力。自己主張する力。リスク回避をするサバイバルスキル。

インドでは生活の中でも、必ずしも相手が正しいことを言っているわけではない、ということを意識するようになりました。

明日できると言ったものが1週間くらいかかることも普通にある。そういうことを受け流せる大らかさが身につきましたし、何事も事前に細かく確認をし、リスクを回避するようになりました。

ただ、いつも言われるがままにしていると自分が損をするので、下手にでるだけではなく、時には相手に喰いつくサバイバルスキルも身につきましたね。

 

Palette編集部
インドで生活することのメリットは何だと思いますか?


ー日本では出会えない、エネルギッシュで、おもしろい日本人と出会える

プライベートで、業種関係なく面白い日本人にたくさん会えることですね。

日本では、他の会社や異業種の方との交流の機会はなかなかありませんが、インドでは日本人会やクラブ活動などを通して出会いの場がたくさんあります。海外で働いている人の中には、熱い思いを持っている人も多く、そういう人がどういう思いでインドで働いているのかを聞くのはとても面白いです。

また、日本人の数自体が少ないため、会社の社長さんクラスの人とも気軽にお会いできるのも貴重な体験だと思います。

また、チェンナイにいる現地採用の女性たちのエネルギーはすごいなとも思っています。なかには、インド国内で北から南へと転職を繰り返すなど、インド歴が長い方も結構いらっしゃいます。彼女たちはインドが好きでインドにい続けているんですが、それにしてもやはり体力も気力も必要だと思うんです。

私もかなりインドが好きな方だと思うんですが、周りの現地採用の友達はちょっとレベルが違う気がしますね。皆さん本当にバイタリティがあって驚かされるし、とても刺激をもらっています。

インド 転職

Palette編集部
駐在半年が過ぎましたが、今後の課題、チャレンジは何ですか?


ー尊敬する前任者が自分の目標。自分のやり方も確立していく

私の目標は、前任の方に近づくことです。

豊富な経験はもちろんですが、とにかく指示が明確で尊敬しています。すごく明確なオーダーを出すし、声にも貫禄がある。きっとそういうところも含めて、スタッフから尊敬されているんだと思います。

前任者と同じ立場になれるかどうかは分からないですが、それでも、自分のやるべき業務を、自分なりのやり方、関わり方を見つけて確立していきたいと思っています。業務自体もまだ把握していないこともたくさんあるので、前任の方の背中を追うように、ひとつひとつクリアしていきたいですね。

これは目の前の目標であると同時に、長期的な目標でもあります。

 

Palette編集部
インドでの経験は、帰任後にどのように生かされると思いますか?


ーインドやミャンマーの現場を理解するわたしだからこそできる、海外拠点サポート

日本での配属先にもよりますが、おそらく国際部門でいろんな国や拠点とのやりとりをする仕事になるかと思います。海外では、日本の感覚で物事が進まないことは当たり前ですから、例えば期限設定にしても、少し余裕を持ったプラニングをすることができると思っています。

やはり、海外の現場を経験していると、日本とはやり方も動き方も違うことを肌で感じることができるので、それがインドやミャンマー以外の国であっても理解しやすいと思います。なので、帰任したら実際に現地に行っている方のフォローや相談相手になれたらと思っています。

 

最後に、現在インド就職を考えている人、迷っている人へ向けてメッセージをお願いします。

もしインド就職に迷っている人と出会ったら、私は勧めると思います。
大変なこともあるけれど、やはりインドは面白いし刺激的な国です。日本とはまったく違う世界がありますからね。

それにキャリアとしても、外国人としてインドで働くことは、とてもいい経験になると思います。

 

【パレット編集部より】

インド就職をご検討される人から「インド転職は、キャリア構築に役立つのか?どうやってキャリアプランを作っていくのか?」というご質問をいただきます。

実際、ここ数年、奥村さんのようにインド就職がキャリア構築となっている方々が増えています。現地採用から、女性駐在員としてキャリアアップされた一つの事例をインド就職に迷っている方にご紹介させていただきたく、今回奥村さんにインタビューのご依頼をさせていただきました。ご協力ありがとうございます。

コロナ禍に突入した2020年~2021年は、インドへの転職希望者が減少していましたが、オミクロン株が収束しつつある現在は、転職希望者や実際に転職され現地での就業開始されている方も徐々に増加しています。本記事が、今、海外転職に迷っている方の後押しとなれば嬉しいです。パレットを運営するJAC Recruitment Indiaでは、無料就職相談、求人ご紹介だけでなく、キャリア構築のご相談を受け付けています。いつでも、お気軽にご相談ください。

 

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